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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1421/1599

16-76 怖いよね


山守と山越の民を消す?


いや待て待て。山守の民は知らん。けれど山越の民はオビスが言うほど、悪いヤツとは思えない。



山越の民は山守の民に迷惑していたし、山守から逃げてきた民を受け入れていた。それが悪さしてチョン切ったぞ。


他のも同じようにすると、村長むらおさが言っていた。






「あのな、オビス。」


「うん。」


「山守の民は、その何だ。会ったよ。他の人は知らないが何となく、目が怖かった。」


オビスも山守の民。傷つけないよう言葉を選び、伝えたツモリだがドウだろう。


「うん、怖いよね。」


ニコリ。




山守は祝辺はふりべから食べる物や着る物、生きるのに要る物を譲ってもらっている。なのに飢え、殺されるのは分けないから。


おさかしらが取り込むから。



この体、長のせがれのだったんだよ。なのにガリガリで腹がふくれてさ。おじさん、知ってる? 酷く飢えると腹だけポッコリ出るんだ。


足もね、膨れるんだよ。




「そうなのか。」


「そのうち動けなくなって、死ぬんだよ。」




知らなかった。乱雲山は閉ざされていたけど豊かで暮らし易くて、飢えて死んだりこごえて死ぬ子なんて一人も居なかった。


アンリエヌだって同じさ。ビックリするホド豊かで皆、幸せそうに笑っていた。



・・・・・・オビスの腹は、今は出てイナイ。


けど前は、死ぬ前はポッコリ出ていたんだね。足も膨れて歩けなくて、親に引きられて差し出されたんだ。神に。




「死んだ子のむくろおにが入って、それでオビスになったんだ。おじさんに名をつけてもらう前は名無しで、もう何が何だか分からなくて。それで、それで。」


キュッと握った手の甲に、涙がポタポタ落ちる。






腹腔ふくくう内に異常な体液が貯留ちょりゅうしたモノを腹水ふくすいといい、その状態を腹水症という。


腹水症では数リットルの液体が腹腔内に溜まる事も少なくない。



腹水症は主として肝硬変・門脈血栓・腹膜炎、腹膜の腫瘍などの際に起こるが心臓疾患・腎臓疾患の経過中にも見られる。


つまり、非常に危険な状態と言えよう。






「長の倅は生まれて直ぐ、母さんに死なれてね。新しい母さんには子が、同じくらいの子が居たんだ。嬰児みどりごの時から腹をかせていて、泣いても泣いても乳が貰えず泣かなくなった。」




その後もポコポコ弟妹が生まれ、ずっと『アレ』と呼ばれて死んだ。だからジロにオビスと名付けられた時、満足してスッと姿を消す。



だから皆で話し合い、決めた。これからはオビスとして生きよう。


嬉しそうに笑って根の国へ行ったオビスに、また会った時に伝えるんだ。『悪いヤツは、もう居ないよ』って。胸を張って伝えるんだ、と。




「山守の民は悪いんだ。他の里とか村から子をさらって、攫った子を死ぬまで扱き使う。食べ物も少ししか貰えないし、フラフラになっても休ませてもらえない。死ななきゃ幸せになれないんだ。」


骸に飛び込んだのは、そうして殺された幼子おさなごの隠。死んでも幸せになれなかった隠。


「生まれ育った地へは、もう。」


戻れないのかい?


「・・・・・・うん。」






山守の民を憎んで死んだ。だから山守の地と、山守の民が居る地にしか行けない。


戻りたくても戻れない。


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