16-75 戻れない
はじまりの一族が建国したアンリエヌは、人と魔物が暮らす国。
はじまりの一族は、その姿は同じだが人ではない。生きるために命を吸い、楽しむために魂を奪う。嗜好品として血を飲んだり、食事を楽しむこともある。
はじまりの一族から才を奪えば、ただの非力なバケモノだ。空腹を満たすために動物を襲い、生き血を啜って命を繋ぐ。
けれど、そう長くは続かない。
「今、やっと解ったよ。」
氷炭相容れない仲ってのは、何をドウしたって合わない。だから国民は皆、カー王の即位を喜んだ。
「スゴイな。」
化け王って。
人の守は祝辺から、隠の守は霧雲山の統べる地から出ようとシナイ。それが祝辺の守。
八が人の守だった時、出ようとしたが森に阻まれた。鎮森から警戒されて。
鎮森の中で祝辺の守が襲われたら、森の生き物が動く。けれど八は瀕死の状態なのに、動物も植物も隠も知らんぷり。
「シブトイな。」
まだ消えないよ、どうしよう。
「頭や胸を貫いても、四肢を飛ばされても戻るなんて。」
プラナリア並の再生能力だな。
「細かく刻んで、そのまま燃やすか。」
全ての細胞核を破壊するのは難しい。
何だ、この生き物は。サラリと恐ろしい事を。待て、剣を抜くな。おいチビ、笑ってナイで止めろ。
マズイまずいゾ。このままでは・・・・・・死ぬ?
いや隠だ。死ぬ事は、ない。と思う。
「ギャァァァァァァァァッ。」
たぁすぅけぇてぇぇぇ。お願い!
いつもならフラリと、とつ守が現れるのに。呼んでなくても現れるのに、どうして来ない。
木よ草よ隠よ、獣たちよ。頼む、とつ守に伝えてくれ。八が危ないと。
あぁ、どうして。どうして一隠も来ない。そうか、見捨てられたのか。これでも隠の守だ、消える事は無い。
だからって見捨てるのか、この八を。
「煩い。」
脆くなっていた頭蓋をスパンと切られ、真っ二つ。それを見つめるオビス。隠の守の再生能力に興味津津。
「うわぁ、シワシワだ。」
頭蓋腔内で脳髄膜に包まれ、守られているハズの脳髄が出た。それを転がっていた掌サイズの小石で潰し、毒を仕込んでからパチクリ瞬き。
「ビチャッとした。」
こうなると隠でも、祝辺の守でも元通りになるとは限らない。何らかの後遺症が残るだろう。
「さぁ、行こう。」
「行くって、どこへ?」
「オビスの家さ。」
オビスの体は口減らしのため、山守神に捧げられたモノ。山守の村長の倅だったのだ。もし戻れば直ぐに気付かれ、追い返されるだろう。
お腹いっぱい食べて、ワンワン泣いてスッキリした。けれど戻れない。
鎮森に隠れ住み、山守の民を一人づつ消していたから。
「おじさん、あのね。」
これから話す事、聞いてくれる?
「なんだい。」
聞いても嫌いにならないで。
「あの、あのね。」
嫌われたら、どうしよう。
「あのね。」




