表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1418/1598

16-73 いつもの事


闇堕ちしてもはらわたを抜かれても、胸がからっぽになってもおには隠。厄介なのは強い祝の力でも清められない、死んでも力を保ち続ける闇の使い手。



祝社はふりのやしろの継ぐ子の中から選ばれる人のもりは、隠の守になることで力を増す。


生まれ持った力が二つなら弱い力が強い力に吸収され、不撓不屈ふとうふくつの精神を得ると言われている。






「まだ使える。」


腐っても祝辺はふりべの守。


「殺しはシナイ。」






は悟る。


この生き物は闇堕ちし、隠を越える力を持った。それが何なのか分からないが、どんなにあらがってもかなわない。


山守の祝を苦しめた呪いの種より強い『何か』を、その身に宿やどしているのだと。



祝辺の守なんだ。どうにかして逃げなければ、あの生き物に消えるまで逆らえず、苦しむことになる。


十の守に囲まれるより嫌な事が、喰隠くおに放り込まれるより嫌な事が起こってしまう。






「話し合おう。」


八が無理に微笑み、闇を伸ばした。


「話し合い、ねぇ。」


八の闇をパチンとはじき、スッと目を細める。






オビスの中に渦巻うずまく憎悪は、山守の民と祝辺の守に向けられている。


不安を増幅させ心を操る力より、もっと強くて大きな力を得たのだ。とつ守ならも角、八に勝ち目など無い。



渾身こんしんの力を込めたソレがはじかれた事に驚き、見開く。見えない何かに押さえ付けられ、指一本動かせない。


そんな状態で何が出来るのか、頭が割れるまで考えても分からないだろう。






「えっ。」


後ろから飛んできた『何か』が八の頭をつらぬき、いや『何か』に頭をカチ割られた。


「なっ。」


オビスは何もしてイナイ。


「ヴッ。」


続けて『何か』が、八の胸に穴をあける。






八は隠だ。血も肉もあるが死んでいるので、どんな姿になっても消えない。なのに物凄い顔でオビスを睨み、闇を深めながら伸ばす。


伸ばされたソレがふくれるたび、蜂の巣にされるのに。



山守の民から奪うダケでは足りず、鎮森しづめもりの隠たちを痛めつけた。そうして集めた闇を使って動いても、いつも他の隠に潰される。


なのに諦められない。






「呪いか。」


オビスが呟くと、八から切り離された闇がうごめいた。


めろぉ。」


ブワッと闇が深くなり、風通しが良くなった体を揺らしながらオビスに近づこうとする。






真っ黒になった腕を、手を伸ばす。けれど届かない。


他の隠と同じように壊し、使い潰す気だった。使えなくなったら取り込み、その全てを奪う。いつもの事だ。



飛び散った闇が蠢きながら集まり、八に戻ろうとする。けれど力尽きたのか、サラサラと崩れて消えた。


消える度、闇に引きられるのに八は笑う。






「その子から離れろ。」


ジロが戻ってきた。


「どうして・・・・・・。こんな姿なのに。」


オビスが叫ぶように言い、くちびるを噛む。


「どんな姿をしていても幼子おさなごだ。守るさ。」






化け王城で元の体に戻った時、ひどく驚いた。生まれて初めて見る魔物は皆、個性的だったから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ