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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1414/1603

16-69 目の前が真っ暗になった


全切除されてから数日後、せんを抜いたら尿しとが出た。


三月みつきの間、縛られたまま垂れ流し。






「やっと、やっと出られる。」


ワケではナイ。


「あっ。」


チョン切り台から転げ落ち、ベタッと倒れる。




垂れ流し期間中、食べさせてもらえたのはかゆだけ。骨と皮になった、とは言えない。けれどせたのは確か。



これまで有ったモノが無くなり、何となく歩きにくい。


これからは『しゃがんで』用を足すと言われ、目の前が真っ暗になった。




「どっ、どこへ。」


狩り人に腕を取られ、そのままズルズル引きられた。


「嫌だ。」


と言っても聞いてもらえない。




山越分社やまごえのわけやしろの離れから出され、分社わけやしろに放り込まれた。のだが、どうもオカシイ。分社に柵など無かったし、めかんなぎは好きに出歩いていた。


なのにドウして。




「出せ。」


叫びたくても、暴れたくても力が出ない。


「ここから出せ。」


柵を壊そうと体当たりしても、フニャンとして倒れるダケ。


「大きいのも小さいのも、ソコにしろ。」


ひとやの隅に小さなかめが一つ、置いてあった。


「壊すなよ。」



嫌だ、ここから出してくれ。ずっと、ずっと死ぬまでココに? どうして。






「うわぁ、ヒドイ。」


高みの見物と洒落込しゃれこんでいたトモが、思わず呟く。


「女っ。」


切除されたのに、もう無いのに腰を振る。


「ハッハッハッハッ。」


顔を赤くしてよだれを垂らす。


「気持ち悪っ。」




分社という名の獄に入れられ、お飾りの覡になったソウは無力。去勢、それも全切除されたのに欲情にかられて腰を振る。


怪力の持ち主だったが、もう思うように暴れられない。




さかりがついた獣ね。」


猿やたぬきのように、朝までキーキー騒ぐのはめなさい。うるさいから。






ソウは裂いた獣という意味で、名付けたのは実父。


ソウの母は出産後、出血多量で死亡。後添えを迎えず、男で一つで育てたが二年前、心労がたたり死亡。



頼る親族、縁の者も居ないソウは村外れの獄に入れられた。


多くの女を苦しめ、嬰児みごりっごを裂き殺したのだ。当然である。






「育て方を間違えたか。」


母なし子だ。寂しい思い、つらい思いをさせただろう。


「そんな事ないわ。」


いつだって、あの子の事を考えていた。


「ありがとう。」


おにになった両親が泣いている。ソウの姿を見て、サメザメと泣いている。






・・・・・・ごめんなさい。


「母さんも、同じだったのかな。」


リツが嫌いだった。リツを見る父さんの目が、とても優しかったから。


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