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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1410/1601

16-65 山越分社の巫は


「山守の民は、どうして山越にとどまるのですか。」


ジロが問う。


「山越に来る山守の民はトモに、めかんなぎに殺されました。死んだ山守の民はおにになり、分社わけやしろに押しかけます。けれどトモには見る目、聞く耳もありません。」


そう、なんだ。


「山越烏が群がり、谷へ。きっと隠を落としていたのでしょう。」


根の国へ。






山越分社やまごえのやわけやしろかんなぎは我慢も努力も出来ず、短気で攻撃的な性格をしていなければ務まらない。


話を聞く限り、そうなる。



トモが倒れて直ぐ、次の巫を誰にするか話し合われた。けれど適任が見つからない。


いや一人、居るには居るがトモ以上の問題児。



障礙しょうがいにもイロイロあるが、中でも厄介なのが性障礙。女を見ると年齢に関係なく欲情にかられ、腰を振る性嗜好異常者をドウ扱う。



良い案が浮かばず、グズグズしている間に悲劇が起きた。


嬰児みごりごの足を開いて突っ込み、真っ二つに裂き殺したのだ。






「その人で無し、タマと根を切れば良いのでは?」


・・・・・・ハッ。


「そうだ、そうしよう。」


兄弟の父と狩頭が声を合わせ、見合って頷く。






くして、社会的不適応者の処分が決定。


流れるように誰が執刀するか、という話になった。けれど怪力の持ち主を拘束し、適切に処置できる人など居ない。






「ジロさま、お願いします。」


エッ。


「この通り。」






男性の去勢術なら知っている。処刑法の一つだったカナ? アンリエヌで読んだよ。



先ず初めに、腹と両腿の付け根にグルグルきつく、布を巻く。次に膝を折って座らせ、股を開いた状態で両の手足を固定。素早く切除する。


尿道が閉じないように木の枝を細く削った物を差し込み、キレイに洗った麻布の襤褸ぼろを患部にペタリ。乾く前に水を掛け、常に湿った状態を保つ。



栓を抜いて尿が出たら三月、穴を開けた簀子すのこに縛ったまま寝かせて垂れ流し。少し動いたダケで痛むらしい。


尿が出れば助かり出なければ死ぬが、成功率は高いと書いてあった。






「引き受けるかドウかは、熊を運んでから決めます。」


血抜きと解体は済ませたが、この量である。少しでも早く届けて、美味おいしく食べなければ。


「そうですね。けれど、よろしいのですか。」


「はい、どうぞ。」


鎮野しづめのへは、他の獣を狩るので。






親熊一頭、小熊二頭分の肉である。山越にどれだけ人が居るのか分からないが、お腹いっぱい食べられるだろう。


幼い兄弟には毛皮を持たせ、大人三人で肉を運ぶ。



骨は穴を掘って埋めた。はらわたは犬に食わせ、幼子おさなごの護衛を命じた。ワンと吠えたから理解した、と思う。






「母さん、ただいま。」


山守の民に食料を奪われ、森で見つけた食べ物を幼子に食べさせた。そうして動けなくなる。


「強いおじさんがね、熊を狩ってくれたんだ。みんなで分けても、お腹いっぱい食べられるよ。」


思った以上に人口が多かったので、お腹イッパイは難しいカモしれない。


「そう。」


力なく微笑み、幼子の頭を撫でる。


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