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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1409/1599

16-64 傷む前に


ず小熊。


頭が完全に潰れていたので、持っていた短剣で首を落とした。丁度ちょうどイイ感じに折れた枝があったので、後ろ足を縛って引っ掛けた。



次に母熊。


コチラも潰れていたが、首を落とすのは難しい。だから首の横をザックリと、体重を掛けて切った。


それから大木おおきの太い枝に逆さに吊るし、幹に縄をグルグル巻いて結んだ。






「おぉい。」


遠くから男の声が聞こえる。


「聞こえたらこたえろぉ。」


兄弟の親か、同じ村に住む狩り人か。


「父さん?」


お兄チャンが呟く。






「ワンッ。ワオォン。」 ミツケタ。イマシタァァ。


サッと飛び出した犬が兄弟に近づき、クンクンしてから吠える。


狩頭かりがしらの犬だ。」


弟クンに撫でられ、スッと目を細めた。


「クゥン。」 ミツカッテヨカッタ。






良かった。この子たちの親が狩り人に頼んで、探しに来たんだろう。犬が吠えて知らせたから、そろそろ来るかな。



そうだ! 親熊と小熊を譲ろう。ココから鎮野しづめのは遠い。熊をかかえて行けないし、傷む前に食べなければ腐ってしまう。


うんうん、そうしよう。






「父さぁん。」


弟クンが駆け寄り、抱きつく。


「ごめんなさいぃぃ。」


謝りながら大泣き。






山越は山守の北、平たい地の少ない山。山守から移り住む人が多いが、祝辺はふりべが支えるのは山守だけ。



山守の民は食べ物や着る物など、要る物を貰うのが当たり前だと思っている。


だから考えもしない。おのらが他の地に望まれず、外れに追いやられる事を。






せ細り弱った母に、お腹いっぱい食べてもらおうと森へ。」


兄弟がコクンとうなづく。


「山越のおさかしらが何を言っても聞かず、食べ物が足りないなら生贄いけにえを出せ。山越神やまごえのかみかんなぎささげろと騒ぐのです。」






山越に在るのは山守神やまもりのかみ分社わけやしろ。つまり、山越神など御坐おわさない。


そもそも山越は山守神の使い烏、山越烏の生息地。



烏は利口な鳥で人間の居住地域の近くに生息する。なので、鳥類の中で特に人間とのかかわりが深い。


そんな烏に毛嫌いされる山守の民が山越で、いや他の地でも上手うまく馴染めるだろうか。






「生まれた嬰児みどりごを奪い、返してほしければ死ぬまで養え。若い女を差し出せと言うのです。」


何だそりゃ。


「山守では暮らせないから逃げてきた。山越で暮らしたい。そう言って助けを求めたのに山越でも、死ぬまで山守の民として生きると。」


何を言っているのか解らない。


「トモが生きていたら、きっと。」






トモは死んだ山越分社やまごえのわけやしろめかんなぎ。分社を守るが祝の力は無く、口寄せ専門。



マツとトミの末子で腹違いの姉、リツを見下しながらも、その全てに嫉妬。


己が秀でていると思い込み、周りを巻き込み従わせようとするのを多鹿たかのカヨに見抜かれ、山守と山越の民を根絶やしにする計画に利用された。



『神から崖に分社を建てるよう、御告げがあった』と村長に宣言し、巫となった哀れな娘である。


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