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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1408/1600

16-63 迎えに来たよ


助けたのが男でも女でも、おさなくても年老いていても関係ない。




「どういたしまして。」


運命の相手との運命の出会いではナカッタが、幼子おなさごの明るい未来を守る事は出来た。それでヨシとしよう。


「おじさん、お願い。兄ぃも助けて。」


お、オジサンなのか。十七歳は。


「兄さんは、どこかな。」


一瞬フラッとしたが『シッカリしろ』と、心の中でおのを応援。


「アッチです。」






幼子を抱き上げ、指し示す方へ駆ける。その先に見えたのは後ろ足で立ち、右の前足を上げる熊だった。



素早く弟クンを大木おおきの枝に乗せ、つかまらせてから兄の救出に向かう。


その手に握ったのはつるぎではなく、走りながらバキッと折った太い枝。






「グヲォォ。」


母熊の左脇腹に蹴りを入れ、仰向あおむけに倒すと同時にとどめを刺した。


ささらのように端が細かく割れた枝で。


「オォォ。」


小熊が二頭、ジロ目掛けて駆けてきた。


「あぁ、そうか。」


タンッと飛びあがり、一頭の頭を蹴り潰す。


「悪く思うな。」


そう言って、もう一頭の頭も潰した。






もう少し離れていたら、幼子二人を抱えて逃げられたのに。


小熊から母だけでなく、命も奪ってしまった。小熊が逃げてくれれば。いや、もうそう。



この子の兄は足を痛めている。


骨がポキッとキレイに折れていたら引っ張って、え木をして固定する。けれど砕けていたら、可哀想かわいそうだがドウにもならない。




「あぁ、そのまま。足に触れるよ。」


「はい。」




あの破落戸ごろつきから逃げようとしたのか、子連れの母熊から弟を守ろうとしたのか。いづれにせよ足をひねって痛めてしまったのだろう。




「折れてはイナイ。痛みが消えるまで動かさず、家で大人しく過ごしなさい。」


「はい、そうします。」


「少し待っていなさい。弟を連れて戻るから。」


「ハイッ。」




お兄チャンは知らない。弟が山守の破落戸、二人にさらわれた事を。かかえられた状態で救われ、目の前で死ぬのを見た事も。




「迎えに来たよ。」


木の枝に掴まり、ジッとしていた弟クンに声を掛けた。


「あいっ。」


チョッピリ涙目。




イキナリ大木の枝に乗せられ、シッカリと掴まるように言われた。うなづくとタッと駆け出し、見えなくなる。


そのぐ後だ。熊の声が、大きな声が聞こえたのは。




「さぁ。」


弟クンをユックリ下ろし、優しく背をポンと叩く。


「兄ぃぃ。」


弟クンが泣きながら、お兄チャンに駆け寄った。


「怖かったよぉ。」






オンオン泣く兄弟から少し離れ、枝ぶりの良い大木を探す。


急いで血抜きしなければ、はらわたを抜かなければ美味おいしく食べられないから。


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