16-62 恋愛は自由だ
遠目でも判る。ドコからドウみても人攫いだ。
手加減しないゾ、覚悟しろ! と心の中で叫び、ジロが破落戸の前に飛び出した。
「何をしている。」
後ろ向きに抱えられていた子を素早く救出。
「良い衣を着ているな。」
舐めるように見られ、思わず後退る。
「男とドウコウなりたいとは思わない。」
ジロは恋に恋する男。運命の相手と、運命の出会いが待っている・・・・・・ハズ。
「フッ。」
「何が可笑しい。」
と言いながら助けた子を立たせ、背に隠した。
「イイねぇ。」
瓶詰生活が長かったのだ。いろんな国の読み物を堪能し、イロイロな知識を得た。その中に有ったのだ。男と男、女と女が愛を育むモノが。
「恋愛は自由だ。」
思わずアンリエヌ語が出た。
「ナニ言ってんだ。」
解らないよね。
「人を好きになる気持ちは誰にも止められない。でも、だからと言って嫌がる子を襲うのは良く無い。」
正論、ドーン。
悪い人から助けてくれたんだ。この人なら、きっと兄ぃも助けてくれる。だから妨げない。泣かない。騒がないから、お願い。やっつけて。
後ろ向きだから分からないケド、見えないからって暴れないよ。だって早く兄ぃのトコロに戻りたいもん。
「おとなっ。」
『大人しく従えば、悪いようにシナイ』と言おうとしたのに、言い切る前に反撃されて目を剥く。
「あっちゃぁ。」
山守の破落戸の鳩尾に、ジロの右ストレートが入った。
「イキナリ襲われたから驚いて、身を守ろうとしたんだ。殺す気はなかったよ。」
正当防衛を主張。その数分後、破落戸その一が内臓破裂により死亡。享年不明。
「このぉぉ。」
破落戸その二が、ジロの背後から襲い掛かる。
「えっ。」
振り返りながら左手でバーン。
「また、やってしまった。」
うん、やっちゃったね。
「だからさぁ、イキナリ襲うのは止めて。誰だって死にたくないから、身を守ろうとするんだ。殺す気なんて無かったよ。」
コチラにも正当防衛を主張。その数分後、破落戸その二が右側頭部陥没により死亡。享年不明。
つ、強い。きっと熊でもバシッと、ドーンと倒しちゃうよ。兄ぃからイッパイ離れちゃったケド、急いで戻れば助けられる。
お願いしなきゃ。先ずは、えっと。『ありがとう』の次は何を言おう。どう言えば伝わるの?
「あっ、あの。」
運命の出会い、キター。
「怖かったでしょう。」
優しく微笑みながら振り返る。
「はい。助けてくれて、ありがとう。」
後ろ向きに抱えられていたから、尻を向けていたから判らなかった。それに軽かったし、小さかったし。
でも・・・・・・男の子だとは思わなかったよ。




