16-61 毛皮より羽毛
山守は日当たり、風通しも悪い。だから祝辺に生かされている。食べ物や着る物など、暮らすのに要る品を与えられて。
山守社は祝が、ヨキが死んで変わった。もう祝は選ばないと言い切り、どんなに迫っても追い返される。
聞く耳を持たないのだ。
「たしゅけてぇ。」
幼子が泣きながら助けを求め、走る。
「兄ぃが、兄ぃがぁ。」
死んじゃうよぉ。
やれ生贄だ、人柱だと言って殺し続けた。その結果、山守の人口が激減。
女が少なくなれば子が産まれず、人が増えない。
他から攫おうにも人が少ないのだ。動ける男が足りず、育ちそうな子は夜逃げする。
「おい、聞こえたか。」
「あぁ、聞こえた。」
山守の民が見合い、ニヤリと笑った。心の中で幼子、それも男の子が二人も手に入ると大喜び。
ジロは鎮野に入って、村長の家を探す事にした。けれど手ぶらでは伺えない。そう考え森に入り、獲物を追いかけスッテンころりん。
「受け身ってスゴイなぁ。」
地涯滝から離れていたとはいえ、流れの速い川に落ちたのに掠り傷で済んだ。
「ヘクション。」
ブルルッ。
ジロは思った。枯れ枝を集めて火を熾し、温まるのを待っていたら日が暮れる。だから衣だけ乾かして、サッサと大物を狩ろうと。
「森の中だし。」
キョロキョロしてからスポンと脱ぎ、濡れた衣を絞ってバッバと水気を切った。
「さぶっ。」
急いで枯れ枝を集め、火を熾す。
和みの布は厚みがあり、長く使える良い品だ。けれど十二歳の時に着ていたモノ。十七歳になったジロには着られない。
けれど捨てられず、縫い目を解いて肩掛にした。
「そろそろイイかな。」
アンリエヌの品を纏うワケには、というコトで用意されたのは良村の衣。
「柔らかいのに強いな。」
衣を纏い、羽織っていた和みの布を乾かす。
「そうだ、鳥にしよう。」
アンリエヌのフワフワ寝具を作るのは難しい。けれど水鳥を狩って羽を毟り、折り目の細かい布で作った袋に入れれば良いのではナイか。
「毛皮より羽毛!」
うんうん。
「探すのは湖や沼。」
乾いた布を畳み、袋に入れて背負った。
「さぁて、ん。」
今、悲鳴が聞こえたような。
「おっ、女の子が襲われている。助けなきゃ。」
ジロがタッと駆け出す。
襲われている、というより捕らえられたのは女の子ではなく男の子。それも幼子。
微かに聞こえた声を拾ったが、遠く離れていたので聞き間違えたダケ。




