16-53 そんな事だろうと思いました
嫌なモノを見た。
それにしても何だ、あの汚れと臭いは。蓋つきの甕が溢れた、にしてはオカシイ。
「あっ、とつ守。」
社を離れている、よつ守の代わりを引き受けたが。
「待て。」
みつ守をサッと捕まえ、ニコリ。
「とつ守が笑った。」
キャッキャ。
「待ちなさい。」
みつ守を小脇に抱えてから、ふたつ守も捕まえた。
「わぁい、高い高い。」
そんなに高くナイ。
「ひとつ守、宜しいか。」
宜しくナイが、断れない。
・・・・・・そんな事だろうと思いました。けれど粥に、食べ物に腹下しを混ぜるとは。
「言い出したのは。」
ふたつ守、みつ守。揃ってプイッ。
「私の問いには答えられぬと、そう言うなら。」
とつ守をチラリと見て、微笑んだ。
「言います!」
とつ守は手を抜かない。尻が真っ赤に腫れても、裂けても割れてもバシバシ叩く。
「答えます!」
ひとつ守は何だカンだ言っても、お尻ペンペンで許してくれる。痛いケド耐えられる。
「小さい子が、継ぐ子が今も戻れず、泣いています。」
「なのに凍える事も飢える事もなく、守られているなんてオカシイ。」
二隠の鼻息が荒い。
「祝辺の守なのに、人の守だったのに子を殺した。」
「守らなければイケナイ人を、子を殺した。」
顔を真っ赤にして怒っている。
ふたつ守は強い力を持ちながらも生まれつき病弱だったので、山守の生贄候補になった幼女。
迷わず闇を植え付け生き延びるも、人の守になって直ぐに病死。ひとつ守の言いつけダケは守る過激派。
みつ守は祝女と狩り人の倅。母を生贄にした山守の祝を強く憎み、闇を宿す。
暴走した闇に飲み込まれそうになった時、ひとつ守に清められ、ふたつ守に押さえつけられた事で正気に戻った自称、穏健派。
アブナイ幼児は揃って、山守の民を嫌っている。
その山守が攫った子に近づき、救い出すフリとして攫った。中には山守に黙って攫い、嬲るように殺した。
なのに喰隠ではなく、祝辺の獄でノウノウとしている觸が許せなかった。
どうしても許せなかったのだ。
「腹下しなど、どこで。」
プィィ。
「とつ守。何か、知っていますね。」
プィィっとしたいが、難しそうデス。
「スッキリしないと、そう言われまして。」
詰まっているのかドウか、見分けられませんでした。幼児体型なので。
「ハァ。息を止めるトカ、泡を吹かすトカ、そんなモノでは・・・・・・。」
目を輝かせるチビッ子たち。その隣で、とつ守が『それイイかも』という顔をしている。
「あっ、あのね。」
ひとつ守、大慌て。
「わかってマス。」
ニッタァ。
「隠は死にませんから。」
「とつ守?」
お前もか。
ブリブリしてイッパイになった甕を出すのはタイヘンなので、控える事になりました。




