表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1395/1595

16-50 同じ先を見た


鎮野しづめの先見さきみさま。


生まれて直ぐに親から離され、御婆さまと呼ばれる祝女はふりめに育てられる。御婆さまには退しりぞいた社の司、禰宜ねぎ、祝がく。



そう聞いていたから守られ過ぎて、とても静かな人だと思っていた。


幼い時に契る子をおので決め、その子と先を見据えて過ごすなんてコト、私には。






「鎮野のよしです。」


ハッ、いけない。


「大泉から来ました、ナタです。」


ペコリ。






鎮森に入る事が多いユタは、木やおにからティ小のうたを教えてもらった。


琴を弾きながら歌うカヨの声を聴きたいが、地割崖を下らなければ山守へは行けない。足腰が強いきこりや狩り人でも命懸け。



日に日に強くなっているとはいえ、ユタは他の子より弱い。行って戻れたとしてもヘロヘロで、幾日いくにちも寝込むだろう。


だから夜、鎮野で木を通して聴く。






「楽しそうですね。」


山守社やまもりのやしろの北に在る大岩で、呪いの種が暮らしている。多鹿たかの織り人だったカヨの狙いは、山守と山越の民。


「とつ守が認めていますし、鎮森しづめもりの民が見守っています。だから皆、飛んだり跳ねたりして盛り上がるんですって。」


目を輝かせながら語るユタ。そんなユタをウットリ見つめる嚴。・・・・・・アツイぜ。






嚴が見た先は、ナタが読んだ先と違っていた。


けれど見るたびに変わるので、ハッキリした事は分からない。そう聞いてホッとしたが一つだけ、同じ事がある。






「人とは違う生き物が、この御山に入れるなんて。」


嚴が呟く。


「そうだね。」


ユタが考え込む。


「私、山守にさらわれる先を見たんです。」


「エッ。」


ナタの爆弾発言に、嚴とユタが驚く。






祝辺は鎮野にも大泉にも手を出せない。だから他の山より豊かで、心穏やかに暮らせる。なのに祝辺はふりべが、おにの守が使い隠を連れて押し寄せた。



大泉の社の司は水を操る力を生まれ持ち、血の流れも操れる。


人や獣には強いが、血と肉を持たない隠には効かない。けれど禰宜には清め、祝には守りの強い力が有る。隠を弾き飛ばし、遠ざけられるハズ。






「それでも大泉は、祝辺に?」


「はい。」






ナタの話を聞き、嚴が先見を試みた。けれど、幾ら力をふるっても見えない。いや見えるのだが、見る度に変わるので定まらないのだ。



祝辺の隠に襲われた大泉は、直ぐに民を守るために動く。


社の司は湖に舟を浮かべ、民を乗せて真中へ。禰宜と祝は力を合わせ、隠を押し戻す。継ぐ子も力を揮い支えるが、ナタが命を落とす。



娘を失ったタエとタラは人なのに、生きたまま鬼になってしまう。深い悲しみと憎しみに呑まれて。


暴れる二人を止めるのは良村よいむら大蛇社おろちのやしろの祝マル。知らせを聞いて飛んできたが、どうする事も出来ない。






「私もね、同じ先を見たわ。」


嚴が見たのは、もっと酷い。


「御山が崩れて。」


「えぇ。多くの命が奪われ、闇が溢れるの。」






霧雲山系は水が多い。祝辺にあるいただきが崩れれば、滑やたいらが崩れた時より大事おおごとになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ