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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1393/1593

16-48 違うんだ


鎮野しづめのには根の国へ続く口が、大泉には地の底へ続く口が開いている。


いづれも国つ神が御守りくださるので、人が迷い込む事はない。






「海を越えて来る、人とは違う生き物が霧雲山に入る。祝辺はふりべのもりの守に隠れて。」


ん。


「根の国から闇が噴き出し、鎮野を襲う。」


んん。


「人の守がおにを動かすが、隠の守は動かない。」


んんん。


「人とは違う生き物が、その。」


あぁ、そうか。死ぬのか。






祝の力を持つ子がスクスク育つので、鎮野は他より生まれる子が少ない。少ないが死なない。だから祝辺の守は、祝社は鎮野の継ぐ子を狙う。


鎮森から山守に入るよう、迷い込むように罠を仕掛けて。



もし掛かっても、守になれなかった隠が助ける。だから皆、鎮森を恐れない。


恐れないが困った事にナラナイよう、シッカリと備えている。それでも幾人いくびとか、姿を消してしまう。






「『祝社はふりのやしろに引き渡せ』と言われないように、この家と社に閉じ込めて隠すのですね。」


祝の力を持たない人は、祝の力が何なのか良く分からない。


それでも社の司は人のおさ。従わなければ、守りたい何か、誰かを守れずに失う。


「人の長でも抑えられない何かが、霧雲山の中で起こるのですね。」


守れない、失うと判れば動く。祝の力が無くても、命と引き換えにしてでも守り抜けば良いと。


「・・・・・・そうだ。」






恐れてはイケナイ、怯えてもイケナイ。どんなにつらくても怖くても読まなければ、先を読まなければ前に進めない。



鎮野の先見さまが見たのは、前に見たアレだろう。他とは違う目をした嬰児みどりごを、多くの力を生まれ持つ子を産む。


それは娘か、その娘か。






「紅さまは人の長。鎮野を守るためなら、何だって為さる。なのに迷いながら隠すのは、先読さきよみの力が欲しいからですか。」


「違う! タエの子を、ナタを守りたいんだ。」






母から娘の一人へ受け継がれる祝の力は、とても強くて恐ろしいモノだ。先見さまは鎮野から、社からも出られない。死ぬまで閉じ込められ、守られる。


力を受け継ぐ子が生まれるまで、命懸けで子を産む。



先読の力は先見より使えるので、いくさ好きから狙われてしまう。だから力を隠し、社でヒッソリと暮らす事が多い。


老いれば眠るように死に、力を持たない隠になる。






「鎮森へ行けと。」


「いや、違う。」


「鎮森に入り、隠に確かめさせようと。」


「違う。違うんだ、ナタ。」






先見さまから聞いた時は驚いたが、人でない『何が』が全て悪いとは思わない。思わないが、人とは違うソレが人と契る。


子が生まれ、その子が力に溺れたら。



怖い。ナタは大泉を守るため、鎮野に移り住んだ。まだ子なのに、たった一人で。


わざわいもたらされる前に外に出て、祝辺はふりべを巻き込んで戦おうと考えたのだ。






「ナタ。黙って、良く聞いてほしい。」






守りたいのは大泉で、鎮野ではナイのだろう。何かを誘い寄せるために飛び出して、力をふるいながら鎮森の奥へ奥へ。


そして捕まり、人で無くなる。


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