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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
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5-66 小烏、猫股に泣きつく


「カカッツ、カァァァァァァ!」


「何だ、騒がしい。落ち着け、クロ。日吉神の、使わしめだろう。」


「クァイ。あっ違う、はい。」


「で、どうした。」


「ゴロゴロさま。助けて!」


「何があった。」



雪に覆われているのに、獣山を越えた。川北は武田、豊田は東山、玉置は飯田。国と国の戦いに、勝ちも、負けもない。多くの血が流れ、奪い合い、朽ち果てる。


むくろは腐り、病が広がる。食べ物は底をつき、豊かな村を襲う。仕掛けては敗れ、また仕掛ける。


国にせず、穏やかに暮らす村は強い。馬守、川田、岩割。仕掛けては負けていた国は、良村を攻めた。




良村は、「早稲わさの他所の」人たちが、やっと作った村。あの早稲に苦しめられ、逃げることも出来ず、戦いつづけた人たちの夢。憧れであり、生きる糧でもあった。


愚かにも、その村を攻めたのだ。戦い慣れた良村の人々は、躊躇ためらわなかった。



見縊みくびっていた。良村は、強い。守り、攻め。どちらにも隙がない。


夏の終わりに出来た、新しい村。楽に勝てると思っていたのに、村どころか、山に入ってすぐ、崩れた。


積み上がる骸に足を取られ、血の海に沈む。




玉置と北山は、東山を加え、霧雲山を攻めた。しかし、戦いにすら、ならなかった。消えたのだ。スッと。


獣は入れる。人だけが、入れない。山に一歩、踏み入れた。勢いよく引き寄せ、いや、飲み込まれた。叫ぶことすら、出来ず。


諦め、釜戸山に狙いを定めた。



エイは、迷わなかった。釜戸神の許しを得て、霧雲山を頼る。そうして釜戸山で暮らす、すべての命が守られた。


残る霊山は、乱雲山のみ。幸か不幸か、大きな川から離れている。弱った兵では、攻められない。ならば、日吉山だ、となった。




「そうか。で、どう戦う。」


「そ、その。」


「戦、戦で。戦える人など、居らんだろう。」


「それが、武田と飯田が、加わったのです!」



「霧雲山は、何と。」


「ゴロゴロさま。日吉です、日吉なんです。頼りたくても、頼れません!」


「違う、と言ってやりたいが、そうだな。」



統べる地を治めるのは、神。霧雲山の他は、神々の御心のまま。それが祝辺の守。


ただし、釜戸山は別。頼られれば、守る。他の山は、気が向くと。気乗り薄だと・・・・・・。



「私、考えました。烏なら、烏を頼ろうと。で、平良ひらの烏に。」


なかなか、良い考えだ。しかし、乱雲山に飛んできた、ということは。


「断られた?」


「そうなんですぅぅぅ。助けて、ゴロゴロさま!」



「落ち着け。なんと言われた。すげなく断るなど、有り得ん。」


「まずは、乱雲山を頼れと。」


「そうか・・・・・・えっ?」


乱雲山に、丸投げですか。祝辺の守!

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