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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1389/1598

16-44 子の幸せを願って


母から娘の一人に引き継がれる祝の力は強い。だから息を潜めて、隠れるようにして暮らす。


もし知られたら逃げる。逃げて逃げて逃げて、次の隠れを探す。



狙われるのは先見さきみ先読さきよみ、闇。水や風、毒使い。逃げられれば良いが、捕らえられればオシマイ。


その多くが酷い扱いを受け、子を逃がして死ぬ。






「着いたぞ。下ろすから、そのまま。」


「はい。」






大きな、とても大きな犬に見つめられている。


尾が垂れているからやまいぬ。いいえ、きっと大神おおかみあがめられて死んだおにだわ。使わしめかしら。



食べられたり、かじられたりシナイわよね。


どうしよう、さっきから見ようとしているのに見えない。読めない、なんて事・・・・・・あるわ。だって人だもの。






「お久しぶりです、昼さま。」


「お久しぶりです、亀さま。」






そばに居るダケなのに、逃げる気なんてナイのに体が動かない。怖くて恐ろしくて離れたいのに、どうして。


上手うまく息が出来なくて、頭がボゥっとしてきた。






「えっ。」


胸が光って、いいえ違う。清らな力に包まれ、守られているんだわ。


「ナタ、こちらへ。」


「はい、亀さま。」






救い出されても家がない、ゆかりの者も居ない。そんな子は(やしろ)に引き取られる。



祝辺はふりべから逃げるように茅野、良村よいむら野呂のろ、大泉に移り住んだタエ。


その娘、ナタが首から提げているのは良山よいやま、良村の守り袋。それも大蛇神おろちのかみめぐし子、マルが作った品に違いない。清めと守りの力が込められている。


子の幸せを願って、譲り渡したのだろう。






「大泉から来ました。タエとタラの子、ナタです。」


ペコリ。


鎮野神しづめのかみの使わしめ、昼だ。こう。」


「はい。」






知ってる、母さんから聞いたわ。鎮野の社の司で、遠く離れたトコロに居ても木を通して話せる、強い力を持っている人。



鎮野社しづめのやしろでは祝の力を生まれ持つ、祝辺に狙われて逃げてきた子は離れで暮らす。継ぐ子になる。


継ぐ子になってイロイロ学んで、大きくなったら祝人はふりと祝女はふりめになるって聞いた。なのに私は違う。






「はじめまして。鎮野の社の司、紅です。さぁ、こちらへ。」


「はい。」






鎮野神に鎮野で暮らす御許しをいただいた。


鎮野社の継ぐ子になるけど、後見うしろみは紅さま。これから紅さまの家で暮らす。でも私はタエとタラの娘、大泉の子。



『それで良い』って、そう言われて嬉しかった。女の子ばかりで驚いたけど、男の子が居なくてホッとした。






「あら、この湯。」


淡く光っている。それに少し、甘い香りがするような。


「ユタ、舞とみつの子が桃の葉をくれたんだ。」


「鎮野には桃の木が生えているのですか。」


ワクワク。


鎮森しづめもりの近くにね。けれど、この葉は違う。山桃湖の近くに生えていた木から一枚、分けてもらったそうだ。」


エッ。


「ナタ、お聞き。鎮森は試しの森。近づくのは良いが、足を踏み入れてはイケナイよ。」


「はい。遠くから見るダケで、近づきません。」


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