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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1386/1602

16-41 先読の力は失ったが


先読さきよみ先見さきみと違い、幾度いくたびでも選べる。えらんで選んだすえが変わる事は少ないが、無くはナイ。


見ようとすれば見られるのに、どんなに努めても見られない。見えなければ、どうする事も出来ない。






「三さま。良村よいむら御坐おわ大蛇神おろちのかみに急ぎ、お伝えしたい事が御座ございます。」


「ウム。ココは大泉、大蛇社おろちのやしろより和山社なぎのやまのやしろが良かろう。」


と言って方向転換。


「タラ。」


「うん、気を付けて。」


「ありがとう。」




先読の力は失ったが、タエには見る目と聞く耳がある。とはいえマルのように、人のときおにの世を行き来する事は出来ない。




「亀さまぁ、聞こえますかぁ。」


大泉社おおいずみのやしろは湖中に在るので、石積みの分社わけやしろほとりに建てられた。その分社に頭を突っ込み、みつが叫ぶ。


大泉神おおいずみのかみの使わしめ、亀は蓑亀の妖怪。只今、隠の世に出張中。


「・・・・・・御歳だからなぁ。」


三も亀の妖怪だが草亀、石亀、すっぽんの隠が集まって誕生。亀より若いがソコソコ貫禄かんろくがある。


「年寄り扱いするでナイ。ほれ見よ、ピチピチして居るわ。」


ヌッと湖面から頭を出し、(ひれ)をパタパタしながら浮上。人の姿に化けた亀が胸を張る。


御髪おぐしに白いモノが。」


三がスッと目をらし、ポツリ。


「ナッ! タエ。まことか。」


「・・・・・・はい。」


ガーン。






母から娘へ引き継がれる、強い先読を持って生まれた子が、鎮野で生まれた子が祝辺はふりべへ行くとは思えない。考えられるとすれば、おの鎮野しづめのに居ればわざわいを。


いや違う。己を狙う何かから鎮野を守るため、鎮森に囲まれた祝辺へ移り住むのだろう。暮らすのは祝社はふりのやしろではなく、その離れ。






「タエ。他に何か、覚えている事は。」


「はい、大蛇様。その子が持つ祝の、清めと守りの力はマルより強いと思います。」


「ナニッ。」






祝の力を二つ三つ、持って生まれる子は居る。居るが何れも弱く、見聞きするのがやっと。


マルは鴫山しぎやま祝女はふりめ、強い守りの力を持っていた祖母が己の子を守るため、命と引き換えに力をふるう。


生まれた子に力が無ければ幸せに暮らせると考えたのだろう。



祝の力を持たずに生まれた幼子おさなごは川北に、成人後は北山にさらわれた。


そこで清めの力を持つ祝人はふりとと契らされ、生まれたのが清めと守りの力を持つ娘、マル。






「幾度も先を、けれど読めないまま。」


産気づき、力を。


「そうか。」


明日あしたの昼過ぎ、目覚めたナタは言います。『鎮野へ行く』と。」






鎮野には社の司になったこう、祝人になったみつ、祝女になった舞が居る。頼めばナタを引き取り、鎮野社しずめののやしろの継ぐ子として育ててくれるだろう。


祝辺の守は、祝社は大泉と鎮野に手を出せない。強い祝の力を持つ子が生まれたと知っても、その子がめぐし子でも愛し子でなくても手の足も出ない。






「タエが見たモノと同じモノを見て、か。」


「はい。」


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