表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1385/1597

16-40 アレを見たのね


外が騒がしい、ような気がする。


カンだよカン。遠くまで見えるようになったケド、耳はね。


近くに落ちたら聞こえるケド、大きな音だから聞こえるんだよ。遠くは見えても聞こえない。






「いつまで待てば戻れるんだろう。」


はじまりの一族は人じゃない。その血が人体に入れば拒絶反応を起こし、細胞が壊死。異常増殖する事も。


「ムクムクっと増えてバァン。」


・・・・・・イヤだな。


「ジロは待つよ♪ って、ん。」


愛さえあれば年の差なんて。が有効なのは上下、何歳差マデなんだろう。


十年以上離れていると、話題に困るよね。


「いやいや、親子じゃん! 下手すりゃ孫じゃん。」


マズイ。幾ら何でもソレはマズイぞ、マズ過ぎる。






このみ? 聞かないで、言えない。でもソウだなぁ。フワフワなのにシッカリしていて、はにかんだ笑顔がステキな


キャッ、言っちゃった。



いつだったか聞いたんだ。そしたら教えてくれたよ、照れながら。父さんは母さんを、母さんは父さんを目で追っていたって。


仲良しだもんなぁ。親になっても子の前で、手を繋いで歩くんだよ。






「アンリエヌは山国だから、釣りより狩りだよネ。」


宝の力なんてナイから、熊をババンと倒せない。でも急所を狙えば一撃、は無理でも倒せると思う。


「フクさまが言ってた。熊肉を食べれば体がポカポカして、お肌がプリプリになるって。」


うんうん。


大弓おおゆみを引けるように、腕を鍛えなきゃ。」


ジロがプニッ、プニッと腕立て伏せを始めた。






同じ頃、やまと人の世。霧雲山系、大泉山。


「キャァァッ。」


絹を裂くような悲鳴が山中さんちゅうに響く。






気絶した子の名はナタ。タエとタラの娘で、先読の継承者である。母から先読について、とても詳しく教わっているので取り乱す事はない。



タエは先読を継承したナタに、マルから貰った守り袋を譲った。


だから、だろうか。涙を流して怯える事は有っても泣き叫んだり、気を失う事はなかった。


そんなナタが倒れたのだ。






「ナタ!」


末娘の悲鳴を聞き、駆け付けたタラが叫ぶ。


「オイっ、シッカリしろ。」


頬をペチペチ叩きながら声を掛け続ける。


「コレコレ、そんなに叩くでない。気を失っているダケだ。聞こえないと解って居るが、おぉい。」


大泉の社憑き、亀頭かねがしらみつひれでペチペチ。


「ナタ。アッ、三さま。」


「おぉ、タエ。よく来た。」






良山よいやまから野呂のろ、野呂から大泉に移り住んだタエはナタを出産する前に見た。


おのに似た娘が鎮野で光の鏡、光の剣、光の珠を持つ子が生まれるのを。



清めと守り、先読、木の声を聞く力も生まれ持つ嬰児みどりごは三つで祝辺はふりべへ。五つで血を吸う生き物に襲われ、人とは違う何かに。


目と髪の色が変わり、肌が白くなってハッキリした顔になる。






「アレを見たのね。」


タラの腕の中でグッタリしているナタのひたいに触れ、タエが呟く。


「そうか。恐ろしい『何か』を見て、気を失ったんだね。かわいそうに。」


両親の思いが通じたのか、真っ青だったナタの顔色が良くなり、スゥスゥと安らかな寝息をもらす。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ