16-37 なるようになるさ♪
冥界行きを断り、タルシェに残って子孫を見守ると決めた亡者たち。今日もニコニコ、楽しく働いている。
「ホレホレ、もう少し。」
ヨチヨチ歩きの幼子を応援中。
「好い加減、諦めろ。」
タルシェ侵略を試みる兵を一瞥。
タルシェに仕掛けても奪えないと理解するまで、周辺諸国の攻撃が続く。それを報告するのもタルシェ城、管理魔の仕事。
防禦の才でタルシェを囲んでいるのだ。化け王の許可なく侵入できる生物など、この惑星には存在しない。
他の惑星には居るカモしれないが特質系、創造の才を持つカーは控え目に言って無敵。
歴代最強だからネ。
「うわぁ、広がる広がる。」
ワクワク、ドキドキ。
「はじめまして、ジロです。」
ニコリ。
隔離空間が広がったことで、ジロの視力も良くなった。
慣れとは恐ろしいモノで、分別されたアレコレに手を振ったり、学んだ内容を聞かせて楽しんでいる。ある意味、残酷。
遠くに並ぶのは、己と同じように瓶詰された『何か』。
声を張り上げても聞こえないだろうし、返事が返ってくる事もない。それでも気にせず笑顔で挨拶。
「人はね、他の生き物の命を頂いて生き長らえるんだ。だから精一杯、生きなければイケナイ。」
体から離れているケド、いつか戻れる。ここに納められているのは全て、人か人に近い生き物のアレコレ。
「戦ってコワイよね。」
偉い人は前に出ず、安全な場所で守られている。
「死ぬのは断れず、戦に駆り出された民。」
死ぬと、殺されると解っていても断れない。
「真っ先に死ぬのもさ。」
ろくな教育も訓練も受けず、肉の壁にさせられる。
化け王は良い王だ。アンリエヌの民を、国を守るために全力を尽くしている。
初めは怖い、恐ろしいと思った。
だって体を奪われて、こんな場所に閉じ込められたんだよ。当然じゃん。でも今は、今の考えは違う。
「元の体に戻ったら多くの人を守れる、優しくて強い人になるんだ。」
そのために必要なのは腕力じゃない。
「ん?」
多少は戦えた方が良いよね。
「負けないぞ!」
瓶の中で披露している謎の踊りは、健康維持や筋力アップのための運動らしい。
偶にカーと話せるとはいえ、幽閉されているようなモノ。何かに話し掛けなければ、きっと発狂するだろう。
だから歌って踊って家族を、故郷を思い出す。
「いつかね、出会えるって信じている。」
えへっ。
「父さんと母さん、幼馴染。意識しはじめたのは、村を出てから。」
キャハッ。
「手が触れてドキッ。離れたくない、離れられない。」
ピピッ。いや、ビビッとだっけ?
「大人になるまで待つよ。って、あれ。もう十二になったのかな。確かめようと思ったのに、聞くの忘れた。」
・・・・・・ま、いっか。
「なるようになるさ♪」
何となく、ジロの性格が変わった気がする。