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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
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5-65 冬の終わり


雪解け道を歩きながら、シゲとカズが話している。



「守りを固める。」


「にしても、何だか、なぁ。」


「奪うことより、助けを求めることを考えろよ。」


「そうそう。しかも、冬に戦うって。」



地が二度ふたたび、震えた。立って入れれないくらい、強く。まず朝、早く。次は、朝餉を作っていた時。冬は乾いているので、回りが早い。火を扱う時は、水を入れたかめを置き、すぐに消せるようにした。


また震えるかもしれない。だから、外で火を使っていた。いざとなれば、雪をかぶせて消せば良い。その考えが、効いた。


良村では、家が倒れただけで済んだ。しっかり食べてから組み直し、凍えることなく眠れた。



家や倉が燃えた村もある。付き合いのある村から頼まれれば、出来る限り助けた。どの村も、耐えられるだけ耐えた。




玉置、北山、豊田、川北。四つの国と三鶴、中井、木下の村で、飢えて凍え死ぬ者が出た。他の村に助けを求めるも、断られた。中井と木下の村を除いて。


中井と木下は、助けを求めてすぐ、救われた。稲田、大田、草谷の村が、手を差し伸べたのだ。三鶴の村に滅ぼされたが、どちらも争いを嫌う、穏やかな村だったから。



火の手が上がる。戦好きが仕掛けては負け、仕掛けては負け。到頭とうとう、馬守と良村が狙われた。


馬守はともかく、良村は。いくら戦い慣れていても、子らを守りながらでは、分が悪い。ひたすら、守りを固める。



「ヨッ。どうした、暗い顔して。」


考え事をしていたシゲ。ふと見ると、そこには。


「ノリ・・・・・・その犬たち。」


「助っ人だ。」


「どこの犬だい?」


「ん・・・・・・。」


「しっかり躾られているってことは、馬守か。」


「アタリ。良く分かったなぁ。」





「ウゥゥゥゥ。」 キヤガッタナ。


「さて、片付けるか。」


軽い足取りで、口遊くちずさむようにノリが言う。



どの国も、良村を軽く見ていた。あの「早稲の他所の」人が作った村だ。しかも、ほとんどが子。戦える者が少ない。初めての冬を越すため、たっぷり食べ物を蓄えている。軽くひねり潰せると。


確かに、多くが子だ。大人は九人。コノとシンは戦えない。逆に言えば、残り七人は戦える。


シゲ、タケ、ムロは狩り人。ノリ、センは釣り人。カズはきこりで、山を知り尽くしている。コタは、罠を仕掛けるのが上手い。犬たちも、戦える。



地の震えが落ち着いてすぐ、シンは村々を回った。見聞きし、思った。良村が狙われると。


子らにも隠さず伝え、戦いに備えた。良村の子は、他の村の子とは違う。戦い慣れてはいないが、術は身についている。残って、村と食べ物を守ることが出来るのだ。




軽く捻り潰すつもりだったのに、あっさり負けた。村どころか、良山にも入れなかった。


山裾の地の奥。森に入ってすぐ、逃げ帰る。多くのむくろを踏みつけて。

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