16-34 脅迫? とんでもない
ジロは育ち盛り。色気より食い気、花より団子。食べた事のない御馳走に釣られ俄然、張り切りだした。
食いしん坊?
美食家、若しくは好奇心旺盛と言ってあげて。
「どうなっている。状況は、戦況は。」
僻地の小国だが、歴戦の勇者を送った。
「それが、その。」
バンバン兵を送ったのに一人も、伝令使も戻らない。
「何だ! ハッキリ言え。」
嫌な予感しかシナイ。
「先遣隊もろとも、全滅したと思われます。」
臣下がサッと膝をつき、胸に手を当てて言い切った。
「ナッ。」
アンリエヌ国王が代替わりした、という話は聞かない。というコトは相当、老いているハズ。そんな年寄に、蛮夷に敗れたのか。
・・・・・・信じられない。が恐らく、認めたくないが事実なのだろう。
どうする。考えろ、どう動く。
「アンリエヌを囲め。」
イマ、ナント。
「国ごと、丸ごと囲むのだ。」
「・・・・・・お待ちください。」
ポカンとしていた臣の一人が叫ぶ。
「死にたいのか。」
王が剣を抜き、突きつけた。
「アンリエヌは高峰が聳え、氷河がある未開の地にある山国。氷雪に覆われた大山脈です。」
許可なく国境を越えると瞬時に消滅。骨どころか髪の毛一本、残りません。
「それをっ。」
剣先が肌に触れ、ツゥっと血が流れた。
今更、引けない。
長期に亘る戦闘で兵は疲弊。武具も兵糧も不足している。せめて鉄、銅でも良い。原料が有れば。
「申し上げます。」
文官が一人、息を切らせて駆け込んできた。
「戻ったか!」
残念、違います。
「アッ、アンリエヌから戻った使者が。」
真っ青だった顔色が白くなり、今にも倒れそう。
「何だ。」
「先日、処分された使者の懐に。」
と言って、血塗れの『何か』を差し出す。
抜刀したまま玉座の間に転移させられ、転移酔いでフラフラのまま串刺し。短い生涯を閉じた使者の骸は王命により、広場で磔にされる事になった。
その懐に突っ込まれていたモノが落ち、拾い上げたのが新人文官。慌てて追いかけるも足がもつれ、派手に転んで額を強打。
報告を受けた上司、真っ青。
「ナッ、ナッ、何だコレは。」
内容は『迷惑料と慰謝料として大型船、十隻分の金を請求する。払えない場合、速やかにタルシェの領有権をアンリエヌに譲渡せよ』である。
「こんな要求、のめるかぁぁ。」
バタン。ピクッ、ピクピクピク。
ギリシア王、脳出血により崩御。
その事は伏せられ、代わりに『ギリシアがアンリエヌにタルシェの保護を申し込み、領有権を譲渡した』という話が広まった。
モチロン事実です。
消えた兵が流れるように洗浄、分別、格納される様を動画、それもカラー映像で見せられればプッツンしますヨ。
エッ、脅迫?
とんでもない。タルシェの領有権を差し出され、受け取ったダ・ケ。