16-32 何かの儀式か
アンリエヌは永世中立、武装中立の軍事国家。
他の如何なる国に対しても戦争を始めず、他の如何なる戦争に際しても中立を維持。
「コレだよ、コレ。」
格納庫から武具の一部を出し、ニコリ。
「鉄は再利用できるが、木や皮は燃やすしかない。」
ソウデスネ。
「材料費が高騰しているのか、年ごとに青銅の質が低下している。」
ナルホド、ナルホド。
「建築用金物、美術用品として輸出すれば問題ない。」
ソウカナ、ソウナノカナ。
「・・・・・・攻めてくるまで待つか?」
「ソレガ、ヨロシイカト。ん。」
待たされたのに色よい返事を貰えず、追い返された使者は引くフリをして抜刀。と同時にギリシアへ強制送還。
玉座の間に転移させられたのだが、生まれて初めての転移酔いでフラフラ。なぜ殺処分されたのか分からないまま、短い生涯を閉じた。
「いちニッさんシッ、にいニッさんシッ。さんニッさんシッ、よんニッさんシッ。」
腕を上げたり腰を振ったり、尻を突き出して踊るジロ。
「何かの儀式か。」
「エッ、違うよ。こうして体を動かせば、コリコリに凝った肩が軽くなるんだ。じゃなくて軽くなるんです。」
ニコリ。
「そうか。」
知らなかったよ。霊魂でも肩、凝るんだね。
気のせい、だろうか。格納空間が清らかで澄んでいるように思う。
「最近、ずっと向こうからドバドバッて音が聞こえます。あの音、何ですか。」
ワクワク、キュルン。
「聞こえるか。」
「はい。」
驚いた。回収と同時に分別し、格納する音が聞こえるとは。この子は確か狩人と、祝の子孫との間に生まれた子だったな。
狩人の血には祝とは違う、強く大きな力が混じっている。祝の方は鏡だろう。
「耳が良いな。」
「狩り人の倅だからネ。」
ウフフ。
アンリエヌ語の他に、タルシェ語も読めるようになったヨ。次はラテン語とギリシア語を覚えて、いろんな本を読むんだ。
アンリエヌ語訳されたモノも良いけど、原書で読んでみたいんだ。ほら、訳者によって解釈が違うでしょう?
「アンリエヌで文官を」
「嫌だ! やまとに帰る。アッ。」
大王の言葉を遮ったジロ、真っ青。
「気にするな。」
「ハイッ。」
化け王はアンリエヌの国王で、はじまりの一族。才を持っている唯一の王族。とっても偉いんだ。
そんな人?がドウして、やまと。霧雲山の統べる地の南を見守っているんだろう。いつか聞いてみたいケド、聞いちゃイケナイ気もする。
乱雲山しか知らないケド、霧雲山には祝辺の守ってコワイ隠がウジャウジャ居るって聞いた。強い力を持つ子を攫って、祝社の継ぐ子にするんだって。コワイよね。
化け王は命の恩人、恩王? 感謝してマス。