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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1373/1594

16-28 幼き者よ、聞け


ジロが隔離されているのは、格納と隔離の才で守られた私的空間。出入り出来るのは化け王だけ。


核兵器による攻撃にも耐えられる、特殊装置に入れられているので何の心配もない。



当初は悶悶もんもんとしていた。瓶詰びんづめ仲間は寡黙かもくで、ピクリとも動かないから。けれどおのの言葉が聞き取り難いのだろうと前向きに考えた。


それからは一方的に話しかけたり、勉学に励みながら希望に胸を膨らませている。






「あれから、どれだけ経ったんだろう。」


外の様子が分からず、時間感覚が麻痺まひしていた。


「もう、十二になったのかな。」


化け王はアンリエヌの国王で、はじまりの一族のおさ。会いたいと思った時に会える相手ではナイ。


「いつか父さんと母さんみたいに、思い合える人と会えるのかな。」


ジロは己の体がドウなったのか、何も知らない。ただ人とも、はじまりの一族とも違う生き物になった事は知っている。


「まぁ、なるようにしかナラナイよね。」


ゴチャゴチャ考えてもドウにもナラナイ。それが人生。






「バルト宰相! なぜ止めるのですか。」


エド大王と愉快な仲間が王位奪還を目論み、化け王に裁かれた。とはいえ、その大半は生きている。


だから何も知らない新世代は大王一派をかつぎ出し、新政権樹立を目指す。


「我らは偉大なる化け王に生かされている。それを忘れるな。」


「老害め。」


血の気の多い若者が吐き捨てた。


「はじまりの一族は才を持たぬ民を守るため、大王と化け王を擁立ようりつした。」


バルトが語りだす。


「そんな昔話、聞きたくない。」


そうだろうね。


「幼き者よ、聞け。」






旧王城地下に残された倉庫の一角に、古い文献が山積みにされていた。その多くが大王の命によりするされた勝者の、勝者による、勝者のための歴史。


つまり創作物である。



王城の書庫から地下倉庫に移すよう、側近に命じたのはジョド大王。


先代は王子にも妃にも何も伝えず、おいを質に取って化け王を利用していた。



勿論そんな事、誰も知らない。






「化け王は大王の影でも傀儡かいらいでもない。アンリエヌの民を、国を守る盾。」


防御率100%


「ハッ、世迷言よまいごとを。」


いや違うよ。世迷言とは際限なく続ける、ワケの分からない内容の話。他人には通じない不平や愚痴。


「歴史は勝者によって作られる。」


史実が事実とは限りません。


「道理に合わなくても勝てば正義! 道理に合っていても、負ければ不正なものとされる。それが戦い。」


「解っているではないか。」


バルトが微笑む。


「何を。」


「倉庫に残されていたのは強者の論理。全て、道理に合わない不義。」


ザワッ。






バルトは知っていた。


化け王がアンリエヌを統治するようになって、たった数年で乳幼児死亡率が低下。食料自給率と生活水準が上昇したことで教育水準も上がり、健康寿命が伸びた事を。



アンリエヌの民は皆、カー化け王が不老不死だと知っている。


はじまりの一族、それも才を持つ唯一の存在。覇権主義の戦闘狂、大王から王位を奪ってアンリエヌを救った英雄。


その化け王に牙をけばドウなるかも。


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