5-64 密談の結果
どんなに考えても、分らなかった。なぜ、奪うのか。倉が燃え、食べ物を失っても、残っているはず。すべての倉が燃える、なんてことはない。
足りない分は、譲ってもらうとか、魚を釣るとか、熊を狩るとか。なんとでもなる、はずである。
「ハァァァァァァ。」
フク。頭を抱え、溜息。
「そう、思い悩むな。」
「楽しい事を考えよう。」
「熊の干し肉。好きだろう?」
三妖怪、ニコニコ。
「いただきます。」
モグモグ。
「もし、攻めてきても、案ずるな。」
「乱雲山は、妖怪が守っている。」
「墓場へ送る、根の国へ導くのも、良いな。」
「妖怪に」
「勝てると思うな」
「愚か者」
三妖怪、絶好調!
「ねぇ、コウ。」
「なんだい?」
「稲田の、みんな・・・・・。」
「生きてるよ、きっと。」
「そうよね。稲田の狩り人、強いもの。狩頭が長になったって、ゴロゴロさんが。」
「ねぇ、ツウ。」
「なあに?」
「ツウにも、見えるの? 妖怪の姿が。」
「ええ、見えるわ。」
「いつから?」
「鳥の谷から。」
「えっ、何が。そうじゃなくて、ん?」
「洞のある岩の近くでコウ、魚を捕ったでしょう。私、枯れ枝を集めようとして。」
「うん。」
「その時にね、鏡を見つけたの。」
「鏡?」
「そう。でね、触れたら、消えたの。」
「消えた。」
「それからよ。人ではない、何かが見えるようになったのは。」
「そうか。ごめんね、気づかなくて。」
「いいの。初めは驚いたけど、コウがいてくれた。ずっと、そばに。」
見つめ合う二人。
三妖怪も驚いた。天つ神の鏡が、なぜ。いや、それは良い。神は、気まぐれだから。
それより、ツウだ。どんな力なのか分からない。しかし、強い力に違いない。
「乱雲山に迎えられて、良かったな。」
「日吉山なら、奪われていた。」
「人の欲は、底なしだから。」
改めて、ツウとコウ。二人の子を守らねばと思う、三妖怪であった。