16-21 悪夢、再び
化け王が狙った子を祝辺が、隠の守が奪えると思っているのか。奪えっこナイ。
ケッ、押し付けやがって。
「何が『谷河の狩り人に託せ』だ。その前に動かなけりゃ、どんな子も攫えないじゃナイか。」
ブツブツブツ。
「なぁ平良。そろそろ雲から出て、ん。」
「カァッ!」 ウワッ!
見開き、嘴を開いたままカチンコチンに凍らされた。そのままヒュゥっと真っ直ぐ落ち、短かった鳥生を振り返る。
「イデッ。」
平良に乗っていた八は振り落とされ、フワフワ浮かんですぐ凍らされた。パチンと弾かれ、ピキッと罅が入る。
このまま落ちたら隠でもアブナイ。
・・・・・・ここ、どこ?
「グヲォォ。」 ハラヘッタァ。
「クッ、喰隠ぉ。」
乱雲山の麓に入ったのに、入ったハズなのに。
「平良! 平良。」
烏と逸れた隠の守、涙目。
「何で戻ったんだよぉぉ。」
喰隠は山守の北に聳える、喰谷山にある隠の刑場。喰谷山は霧雲山系で二番目に高く、中心に在る喰隠から常に呻き声が聞こえる。
「ヴヲォォ。」 ミィツケタ。
「来るな、近づくな。アッチへ行け。」
集めに集めた闇を抜かれ、スケスケのヒラヒラになった八の声なんて届かない。
「ヲォォ。」 ホカノトチガウ。
ガブッ。
「イぃヤぁぁぁ。」
悪夢、再び。
祝辺の守にも困ったモンだ。愛し子とは違うケド、ブランさまが守る子を狙うなんて信じられない。
言われた通り運んだケド、壊れるまで出られないんだろうな。
「さぁて、戻るか。」
その前に確かめよう。獄を出たジロが言い付けを思い出し、和みに戻るカモしれない。
「戻ったら戻ったでイロイロありそうだけど。」
ずっと守られてきた子が御山の外で、長く生きられるとは思えない。
「ん。」
真っ白。
「ハッ、そうか。」
ココは化け王の。
特質系・隔離はジル王が三番目に創造した才で、あらゆるものを隔てて離す。
祝の力は通じない。
「私は雲井社の禰宜、クラと申します。霧雲山、祝辺の守に狙われた子を遠ざけるために力を揮いました。」
・・・・・・。
「やまと人の世、乱雲山に戻してください。」
ペコリ。
「目を閉じ、そのまま進め。」
「ありがとうございます。」
クラが目を閉じて直ぐ、何かがスッと動く。
背から風が吹いたので歩を進めたが、フワフと浮いているようだ。けれど怖くて瞼を開けない。
「ウッ。」
明るい場所に出たのか、瞼越しでも眩しい。
「目が慣れるまで動くな。」
「はい。」
クラが立っているのは人の世、乱雲山にある麓の洞の前。迷うことはない。