16-20 諦めなさい
まだ出てイナイ。けれど乱雲山に守られていた『何か』が、弱いまま外に出て死ぬ。いや、死にかける。
その前に引き込まなければ、祝社に迎えなければ手が出せなくなるだろう。
「聞いていますか。」
「ヒャイ。」
八はアタの力で縛られ、動けない。
捕らえられていなくても、とつ守に睨まれれば動けなくなる。そんな八を冷たい目で見つめ、微笑む。
同じ祝辺の守でも十代、祝辺の守までは別格。
真名を使わない隠の守は、真名で暮らす隠の守より力が強い。一隠で御山を統べると言われている。
「乱雲山には天つ神の御力が込められた『何か』が隠されています。」
ソウデスカ。
「それを奪うか引き継げば、もっと大きな力が使えるようになるでしょう。」
ソウデスネ。
「八よ、平良に乗って行け。」
オコトワリシマス。
「どうした。」
イヤナンデス。
「平良。」
ヨバナイデ。
「カー。」 オヨビデショウカ。
「早っ!」
シマッタ。
動揺や緊張で瞳が不自然に揺れ動き、幾度も瞬く。その心は乱れに乱れ、ガタガタと震えだした。
そんな八を光の糸で拘束するアタ。
とつ守は平良の烏を腕に止め、優しく頭を撫でた。それを見つめる八の目が潤み、闇が溢れ出す。
「諦めなさい。光の糸は闇で切れるほど、弱くありません。」
アタの目がスッと細くなり、糸がキツク締められた。
「ヴッ。」
涙と鼻水を流しながら八が呻くと、闇がボワッと深くなる。けれどココは屋外。
「抑えなさい。」
とつ守に精神操作系の力は効かない。
嫌だイヤだ嫌だ。乱雲山から出てくる、他とは違う何かを追え? そんなモノに近づきたくない。隠でも痛いんだ、怖いんだ、恐ろしいんだよ。
継ぐ子を締めて闇を吸い上げ、スッキリしたかったダケなのに。それダケなのに、どうしてコンナ思いをしなきゃイケナイんだ。
「聞いているのか。」
「はい。ここのつ守の先読は外れません。乱雲山から出てくる、大きな力を持つ子が襲われる前に攫え。というコトですよね。」
キリリ。
「・・・・・・攫うのではない。襲われる前に見つけ出し、谷河の狩り人に託すのだ。」
八が使えるのは不安を増幅させ、心を操る闇の力。神の愛し子や雲井の禰宜には使えないが、他には使える。
「で、その子。どの社に狙われているのですか。」
良山の大実社、大蛇社なら手も足も出ない。狐泉社、早稲社も嫌だなぁ。
狐火コワイ。
「社ではない。」
「では、えっ?」
ここのつ守が見たのは、ブランを従える『何か』。
目が潰れるホド強く光ったので、その姿を見る事が出来なかった。けれど判る。長く隠されていた力をアンリエヌ国、化け王も狙っているのだと。




