16-19 まだ、そんな事を?
祝辺の守。
霧雲山の統べる地に人外を派遣し、異物を排除するバケモノ集団。選ばれた者が人の守となり、死ねば隠の守となる。
選ばれなかった者は酷使され、隠になっても鎮森から出られない。
「まだ、そんな事を?」
「何が『そんな事』ですか! 社の司なら分かるでしょう。山守神は生贄を、人柱を御求めなのです。なのに、なのに山守社の人は揃いも揃って。」
山守の村長が嘆く。
「幾度でも言いましょう。山守神は生贄も人柱も『要らぬ』と仰せです。」
山守の地は日当たりも風通しも悪く、若く身軽な者は山越を目指す。山越の地も豊かでは無いが、山守よりは暮らし易い。
山守はテイの呪いから解放された。なのに今も、アチコチから闇が噴き出している。
暗躍しているのはカヨ。
「♪ アチコチで噴き出した 深く濃い闇 嘆いても消えないから 離れてみよう ♪」
今日も楽しそうに琴を弾きながら、ティ小のうたを歌っている。
「ウフッ、また増えた。」
ライブは毎回、満員御礼。
「働け! 祝辺の守。」
ピッと闇を指差し、ニッコリ。
山守の民に攫われ、山守の全てを呪いながら死亡。骸は死臭が酷くなるまで穢され続けて闇堕ち。
呪いの種になったカヨは山守断種計画を実行中。
「♪幸せになると信じてみよう 諦めない 憎しみ抱いたら 消えないんだよ ♪」
大岩の近くにいた隠が、潜んでいた何かをクルくるギュッ。ソレを持って広滝へ行き、優しくポイッ。
引っこ抜かれて丸められ、投棄されたのは山守から噴き出す闇の根。祝辺から流れ出した水は広滝を落ち、地涯滝に向かう。
『どんなに濃い闇でも清める』と言われているが、鎮野や大泉の水と比べれば大したコトは無い。
とはいえ清らなので、闇消しに最適。
「ヒッ。」
鎮森の民がポイポイするのを、広滝の上から見せられた継ぐ子たち。揃って真っ青。
「あの闇はね、逃げられないんだ。あのまま地涯滝から落ちて、滝壺の中でグルグルぐるぐる。」
ゴクリ。
「人もね、バラバラになるまで出られない。」
ゾゾゾッ。
「隠になっても。」
「ごめんなしゃい。もう、しません。」
祝社から逃げようとした継ぐ子たちは理解した。どんなに願っても、死んでも戻れない事を。
祝社の継ぐ子は寄せ集め、というワケでは無い。中には他の社から託され、育つまで匿われている子も居る。
その多くはシッカリ守られ、祝辺の守でも手を出せない。
祝社に望まれ、迎えられた継ぐ子は違う。
人の守に選ばれれば良いが、選ばれなければ消滅するまで扱き使われる。
「おや、この感じ。」
「ヒュッ。」
息を呑み、怯える継ぐ子たち。
「八、何をしている。」
「とつ守。と、アタぁ?」
十三代、祝辺の守。十代と十五代、二人の守に挟まれゲッソリ。




