16-18 祝の力とは違う『何か』
大実社は人の世と隠の世を繋ぐ道の管理を、大蛇社から任されている。
入口は社。人の世は大実神、隠の世はオミの担当。
「ゴロゴロさま、お久しぶりです。」
オミは大実神に忠誠を誓う犲。隠の世、良山の自治会副会長も務めている。
「お久しぶりです、オミさま。」
大実山に幾つも村があった時、出雲で日向ぼっこした仲だ。種族の違いナンテ些細な事。
ブランさまが乱雲山、それも隠の世の近くに現れ為さった。見守っていたのは、生まれた時に光った人の子。
きっと何か、強い力を持っている。そう思われていたのに違ったと。
いいや、違う。その子には人の世には無い、大きな力が隠されている。その力をアンリエヌ国、化け王が望まれた?
とすれば代替わり。
「申し上げます。大蛇社から使いが、言伝を預かって戻りました。『大実社から和山社へ』と。」
良村ではなく、大実社から来い。というコトですネ。
「ありがとうございます。」
良村は犬に守られている。加えて村人の多くは、ニャンコよりワンコが好き。
「では、こちらへ。」
大実社から隠の世に入り、送迎用の輿に乗って和山を目指す。人の世の良山も豊かだが、隠の世の良山も負けてイナイ。
見渡す限りキラッキラ。
「コリコリに凝った肩が軽くなった。」
よかったね。
「毛並みも良くなった?」
パサついて傷んでいた毛が何となく、ツヤツヤになった気がする。
「これもマルさまの御力か。」
違います。
「愛し子にもイロイロ、いるんだなぁ。」
まぁね。
「ブラン様は何と。」
ツヤツヤしていたゴロゴロの毛並みが、アッと言う間にパサパサに戻りました。
「言の葉を残されず、御姿を消されました。」
嘘じゃないよ。
「そうか。」
疑っているワケではアリマセン。
収集の才を生まれ持つカーは、同族から才を奪い尽くした化け王。はじまりの一族で唯一、才を持つ存在。
才を奪われた者は皆、吸血鬼化。その大半は落命し現在、旧王城地下にて服役中。つまり全ての才を奪い、集めた化け王は無敵。
王位を大王から奪い、玉座を化け王城へ移したカー王は永世中立を宣言。守りを強化すると同時に食料自給率を上げ、科学技術の推進を図る。
その結果、驚くほど豊かになった。
豊かになれば妬まれ、強国や戦闘狂に狙われるモノ。けれど要塞化したので攻められても、「食料が集まった」としか思わない。
その気になれば惑星をも滅ぼす力を有しているから。
「御考えを変えられたのか。」
大蛇神が呟かれ、蜷局を巻かれる。
「人の子、ジロだったか。祝の力とは違う『何か』を持って生まれたのは。」
はじまりの隠神に問われたニャンコ、シャキン。
「はい。稲田の狩り人、ジロの孫コウ。稲田に逃げ込んだ祝の血を引くツウ。その間に生まれた初めの子です。」
あぁ、ジロの孫の子か。
祝辺の守が知ったら動くだろう。人の守に、と言って。




