16-16 良いモノみっけ
あれ? ココどこだ。獄に入れられて叱られて、ん。叱られてから獄に入れられて、父さんが会いに来て。
違うな。そうだ! 言い付けを守れない。ううん、そうじゃない。言い付けを守ろう、良い子になろうと思うのに忘れる。
だから長く生きられない。
「長く、生きられない。」
そりゃソウだ。
「あぁあ。」
きっと、もう戻れない。
どうしたのか分からないケド、また獄から出てしまった。
・・・・・・宝の力、あるのかな。持っていても、それが表に出ても良い事じゃない。そんな気がする。
捕らえられても出られる、話を聞かない。聞いても忘れて突き進み、また繰り返す。そんな力、何になるんだ。
「狩り人に要る力なら違ったのに。」
狩り人になるのは難しくても樵とか、釣り人とか商い人とか。
「社で働くのに要る力なら、もっと違ったな。」
見えない『何か』を見る力。見えなきゃ確かめられない、守れない。そんな力があれば、きっとイロイロ違っていたよね。
「みんな、ごめん。さようなら。」
ジロが歩いているのは人の世。けれどココは乱雲山、他とは違うヨ。忘れちゃイケナイ。
「オイ、見ろ。」
「人の子だ。」
乱雲山で暮らす妖怪は、人を食らおうとか襲おうと考えない。
雲井社の愉快な仲間たちが目を光らせているし、それより何より雲井神がオソロシイ。
「なぁ、あの子。」
「あぁ。」
神の愛し子は気高く、他とは違う『何か』を漂わせている。だから何があっても、どんなに腹ペコでも手を出さない。
「持っているな。」
「そろそろ出るか。」
祝の力を持っていても、それに似た力を持っていても選ばれなければ、どんなに望んでも愛し子にはナレナイ。愛し子でなければドウなるか。
力を求めるモノに狙われ、攫われる。
「クックック。」
良いモノみっけ。
「クックック。」
唾を付けよう。
人のイザコザを収めるのは釜戸山、妖怪のイザコザを収めるのが乱雲山。つまり居る。イザコザを起こして呼び出された、悪ぅい妖怪がウジャウジャと。
「消えろ。」
大きく白く美しい鳥が一羽、音もなく現れた。
「へっ。」
赤い目をした白い鷲に睨まれ、動けなくなる。
「くっ、食われる。」
動けないが口は動く、らしい。
「フッ。」
ブランに限らず、アンリエヌの民は食通。
出張や赴任など長期間、国外に出ても心配ない。水に食料、生活必需品も現物支給。モチロン安心安全のアンリエヌ製。
護衛も付くヨ。