5-63 あんぐり
呆れて、口をあんぐりと開けたまま、固まった。なぜ? 山裾の地で、戦が始まった。地が震えたことで倉が燃え、多くの食べ物を失った。もちろん、全てではない。
玉置は戦狂い。国を広げるために、あちこち仕掛ける。狙ったら、勝つまで諦めない。止せば良いものを、再び川田の村に仕掛けた。あっさり負け、豊田の国を攻める。
多くの血を流し、玉置は勝った。しかし、奪えなかった。倉を、燃やしてしまったのだ。
北山は山裾の地の端にある。つまり、他の国を攻めるには、時がかかる。豊田に狙いを定め、蛇川を下った。しかし、玉置に先を越される。ならばと、川北を攻めた。
川北に仕掛けた。勝ちはしたが、玉置と同じ。倉を燃やしてしまい、食べ物を奪えなかった。玉置と北山は組み、三鶴を攻めた。しかし、負ける。
三鶴も打って出たが・・・・・・。
三鶴の国。三鶴、中井、木下。稲田、大田、草谷。六つの村で、出来ている。中井と木下の村は、三鶴の村に滅ぼされた。稲田の村は、大荒れに荒れた。
稲田の長は、口固めをした三鶴の長が、早稲の人たちに殺されたことで、逃げた。狩り人たちは、力を貸さないと言い切った。新しい長は悟る、勝てないと。狩頭に長の座を譲り、引っ込んだ。
稲田、大田、草谷。三つの村が組み、三鶴の長に迫る。国は、認める。しかし、国の中の一つであって、対対である。認めよと。
三鶴の長は焦った。中井と木下は荒れたまま。対対である、三つの村は豊か。しかし、食べ物を奪いたくても、奪えない。諦めきれない三鶴の長は、滅ぼした木下と中井から、男手を集めた。
狙うは稲田。しかし、あっさり負ける。
「早稲の他所の」人たちによって、戦う力が削がれていた。加えて、寄せ集めだ。大田、稲田、草谷。三つの村は、互いに何かあれば、助け合うと決めていた。どの村にも、強い狩り人がいる。勝てる訳がない。
三鶴は、対対である三つの村から助けられ、何とかなるだろう。しかし、玉置と北山は・・・・・・。
「信じられない。なぜ、奪うの?」
「フクよ。憤るのは、良い。しかしな、終わりではないぞ。」
「雪解けの後、再び攻めるだろう。」
「獣山を越えて。」
三妖怪も、ゲッソリ。
「そ、その。まさかとは思うのですが、深川を上がる、ということは。」
「考えられる。」
「日吉山、釜戸山。」
「乱れ川を上がって、岩割。」
「そ、れでは。」
「乱雲山も、狙われる。」
「霧雲山は、ないな。」
「狙うなら、良山だろう。」
「良山?」
「良村がある。『早稲の他所の』人たちが作った、新しい村だ。」
「子の方が多いが、強いぞ。しっかり、備えている。」
「人も犬も、戦い慣れているからな。」
三妖怪だけではない。多くの使わしめ、妖怪も知っていること。
フクは驚き、口をあんぐりと開けたまま、固まった。本日、二度目である。