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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1359/1594

16-14 あの子が選び、進む道なら


良山よいやまには良村よいむらがあり、いろいろな里や村、国とも繋がっている。何より強いのが腕っぷしではなく、頭で戦える商い人だ。


だから守るため、狩り人か釣り人がつく。



良村には犬好きが多いのか、狩り人でなくても犬を飼っている。


良村の犬も人と同じ、早稲わさの生き残り。一匹で十人ほど死なせると言われる、早稲の犬より強くて賢い。


見えないモノが見えるのだろう。吠えて遠ざけ、飼い主を守る。



首に布を巻いている犬を見たら、そんな犬を連れていたら良村の人。手を出せば命が無い。だから布を巻いていなくても、犬を乗せた舟は避けられる。


みよしに座っていたら十中八九、良村の犬。






「良村の犬は賢い。言い付けを守れない、わざわいもたらすようなモノを遠ざける。」


「はい。」


「人でもおにでも同じ。犬が吠えたりうなれば、何も見えなくても引く。」


「はい。」


「良村は獣谷の隠れ里と結び、忍びとも結び、遠く離れた地で起きた事も知っている。釜戸山の灰が届く地の事も、霧雲山で何が起きているのかも。」






霧雲山を出入りできるのは、祝辺はふりべもりから認められた谷河の狩り人。木菟ずく、鷲の目と呼ばれる忍び。


そんな山の事も知っているなら乱雲山、天霧山の事も知っているだろう。



ジロにはツウから、あの鏡を受け継いだ。


見た事、確かめた事もない。けれど、そう思っている。だから祝辺の守に、霧雲山にダケは渡せない。奪われてはイケナイ。






「朝日のように輝く髪と、夜空のように輝く目を持つ誰か。」


「こっ、コウ。」


「ミツが見たのです。その誰かにジロが、体を奪われるのを。」






アンリエヌ化け王は、ずっと昔から霧雲山を見張っている。いや見守り続けている。おみを鳥の谷に住まわせ、何かを探しているようだ。



使わしめでも近づけない、忍びでも入れない良山に入るのをキラが見た。それからも鳥の谷で見たと言うから、きっと見つけられないのだろう。


そう思っていた。






「コウ。」


「わかっています。ジロが言い付けを破り、ひとやを出ても追いません。あの子が選び、進む道なら。」






死ぬと、体を奪われると伝えても信じようとしない。そんな子に何を言えば、どう伝えれば良いのだろう。


これまで諦めず、見捨てず向き合ってきた。なのに、それなのにジロには届かない。響かないんだ、何も。



この山の隠、妖怪が言っていた。鳥の谷で白く、大きな鳥を見たら逃げろ。その鳥は姿を隠せる。目を付けられたら終わりだ、狩ろうとするな。戦わずに逃げろ。






「他とは違う姿をした誰かは、姿を消せる白い鳥の。」


「そうだ。」






ジロは化け王に、その体を乗っ取られる。いや違う。獣に襲われ死にかけているジロを救うため、その力をふるわれれるのだろう。


体を奪わなければ助からない、そんな傷を負って。



いつだったか出雲で聞いた。化け王は老いない、死なない。けれど新しいうつわを、次の王を探していると。


もしまことなら、その器がジロ?






「体を奪われたジロは、どうなるのでしょう。」


むくろに隠が入れば妖怪になる。数多あまたの隠が入れば強く、長く生きる。」


「強い力を持つ『何か』に奪われれば、人とは違う『何か』として生き続けるのですね。」


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