表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1358/1606

16-13 冷たいようだが


ミツとゴロが生まれ持つ力は強い。ツウとコウの子だ、他と違うのは当たり前。何よりツウは天つ神に選ばれ、御力をたまわったのだ。


その力を受け継いだのはジロ。






「ゴロゴロさま。ジロは言い付けを破り御山から、乱雲山から出るでしょう。」


「ウム。」


「きっと、そう長く生きられない。」


だろうな。


「死ぬと分かっていても、あの子は。」


この山を出る。






おのなごみのおさ。ツウとミツ、ゴロと別れなければ出られない。ジロを守れない。五人で出て、どこへ。


三鶴は変わった。けれど、だからって稲田には戻れない。川田に頼るか? それも難しいだろう。



祝辺はふりべもり。人の守は霧雲山から出ない、いや出られない。けれどおにの守は違う。


霧雲山の統べる地なら烏に乗って、急ぐなら隠のときを通って飛んでくる。



何があってもツウは、ツウだけは守り抜く。けれど守れない。ツウを守りながらミツ、ゴロを守って戦う力なんて無い。


そんなに強くナイ。






「コウ、顔を上げろ。そんなに思いつめるな。」


ツウが泣くぞ。


「ジロは子だが、もうすぐ十二になる。やしろに呼び、祝の前で選ばせる。」


「はい。」






釜戸山から託されるのは、他の山には頼めない子たち。祝の力を生まれ持つ者、授けられた者。祝の力とは違う、強い力を生まれ持つ者。


中には天つ神に選ばれ、御力を授かる子もいる。ツウのように。



もし稲田を飛び出したツウが、稲田を出たコウと会わなければ。


早稲わさのタツに狙われたコウが、ツウを守りながら狩り小屋に辿り着かなければ。そこに川田の狩頭が居なければ。



三鶴の長がツウ探しを早稲ではなく、玉置に頼んでいたら。ツウを探しに出たのが犬好きの釣り人、ノリで無ければ。


ゲンが隠れ里を獣谷に作らなければ、シゲが会いに来なければ。居なくなった子を探すのに、他の狩り人から頼られなければドウなっていた。



シゲもノリもタツをかばわず、縛って突き出した。


釜戸の裁きを受けたタツは、痛めつけられてから獣谷の仕置場に放り出された。生きたまま熊に食われ、死んだ。



コウとツウを狙っていたのはタツだけじゃない。二人が稲田に居た時から、三鶴の長が鼻の下を伸ばす前から祝辺の守も動いていた。


だからツウが逃げ遅れていたら、三鶴の長が早稲を頼らなければ、早稲の長が『他所よその』人を使わなければ違っていただろう。






「ジロが良山よいやまの。いいえ、そんな事は望めません。けれど誰か、あの子が獣に襲われる前に。そう、考えてしまうのです。」






シゲは夢を叶えるため、釜戸の祝に願い出た。


早稲の人から酷い扱いを受け続け、『早稲の他所の』人として村外れで暮らす。その生き残りと、親から託された宝を連れて早稲を出たい。この地に新しい村を作る許しが欲しいと。



釜戸の祝から許され、作ったのが良村よいむら大実山おおみやまは良山になり、少しづつ豊かになった。


子は親から託された宝。そんな村だから釜戸社かまどのやしろは、言の葉が出ない子をたくした。その子が大蛇神おろちのかみめぐし子、マル。






「あの山は強く、祝辺の守でも手を出せないからな。」


加えてマルの力で清め、守られている。


「はい。」


「コウ。冷たいようだが、もう諦めろ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ