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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1356/1594

16-11 そんなに嫌なのか


どんなに慈しんで育てても、歪んで生まれればドウにもナラナイ。生まれつきのワルは、どんなに手を掛けても腐る。


早稲わさには、そんな人が多いと聞く。



早稲に逃げ込んだ人を匿い、村外れに追いやって『早稲の他所よその』人と呼ぶ。男はいくさに駆り出され、女は言えないような扱いを受ける。


死ぬまで。






「タツ。」


谷底で会った時、思ったよ。悪い男だと。釜戸社かまどのやしろで裁かれ、獣谷の仕置場で死んだ。


「同じだと思いたくない。」


向こう見ずなのは同じ。けれどジロは今のところ、誰かを傷つけたり騙したりシナイ。が、そのうち。






雲井社くもいのやしろの西にあるひとやは大きく、他より強く建てられている。近くに村も家も無いので、騒いでも暴れても誰も来ない。



「嫌だ、怖い。出してよぉ。」


柱にくくりつけられたジロが叫ぶ。


「どうして獄に入れられたのか、わかるか。」


「わかんないよ。ノブさん、お願いだよ。」






他とは違う子だ。祝の力か宝の力を持って生まれ、村や山を守るだろう。そう思っていた。けれど今は、人とは違う生き物に見える。



コウもツウもジロを御山の外に出さず、閉じ込めようとしている。けれど、きっと思うように運ばない。


ジロは十二になる前に黙って抜け出し、この山を出るだろう。






コンコン。


「入るよ。」


コウが獄に入ってきた。


「決まったのか。」


「あぁ。」


ノブに問われ、力なく答える。


「父さん、助けて。」


「・・・・・・ジロ。夜に出て、谷に落ちるとは思わなかったのか。死ぬとは思わなかったのか。」






ゴロに止められたのに、そのまま山を下りようとした。ミツの先見を聞いたのに、それでも山を出ようとした。


どうして、いや違う。そんなに嫌なのか? この山での暮らしが。



乱雲山。霧雲山の統べる地にそびえるが、祝辺はふりべもりでも入れない山。


良山よいやまとは少し違うが、許し無く入れば何も残らない。そんな山で生まれ育ったのに、他より暮らし易いのに『出たい』と言う。



何を考えているのか、どんな気持ちなのか分からない。外に出れば戻れないのに。






「外に何があるのか知りたい。見たい、聞きたいんだ。だから、あれ?」


『十二まで待つ』って決めたのに、どうしてだろう。


「言い付けを破って飛び出したのに、助けてもらえると思っているのか。」


助けてくれた、よね。


「十二になれば、認められれば出られるのに。どうして待てない。待とうとしない。」


「それは、その。」


オカシイ。どうして、こんな事になったんだろう。






ゴウとミツに止められても、父さん母さんに叱られても諦められない。諦めちゃイケナイ。そんな気がするんだ。心の底から何か、分からない何かが聞こえるんだ。


この山の外には見た事、聞いたコトもないモノで溢れている。確かめたい。この山に居れば見られない、分からないモノを知りたい。その全てを分かりたい。






「十二になるまで待てないのか。」


父に問われたジロがキョトンとし、まばたきしてから首をかしげた。


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