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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1355/1594

16-10 おやおや、またかい


諦めたんじゃない! 待つ事にしたんだ。


十二になれば好きに生きられる。この山から出ても、もう誰にも何も言われない。雲井の祝に言ったらしかられるから、まだ何も言ってないケドさ。






「おやおや、またかい。」


雲井の社憑き、使いからすのキラが呟く。


「何だい、またって。」


雲井の社憑き、使い狐のコンが問うた。


「ジロが言い付けを破ったんだろう。」


雲井神くもいのかみの使わしめ、ゴロゴロ登場。






雲井の三妖、揃い踏み。


ココは雲井社くもいのやしろ、ではなく人のときおにの世のさかい。このまま進めば間違いなく、肉食系妖怪に食われるだろう。






「軽く痛い思いをさせるか。」


少し先に潜む、いのししの隠を見つめてポツリ。


「ゴロゴロさま、それは。」


あの猪、多くの傷を負っている。きっと人を強く、強く憎んでいるだろう。


「アッ、いけない。」


ジロの姿を見て、近くの隠を取り込み始めた。


「・・・・・・うん、めよう。」


とはいえ困った。ジロには見える目、聞こえる耳もない。コウとツウのせがれなのに。


「ゴロゴロさま、あのシシ。」


コン、大慌て。


「キラ、コウを。」


「ハイッ。」





雲井の三妖怪、本気を出して威嚇いかく


他の隠を取り込むも妖怪化に失敗し、消滅した猪が叫ぶ。その声は見えない、聞こえないジロにも届いた。






「えっ、何これ。耳が痛い。」


鼓膜こまくが破れる事は無い。けれどしばらくの間、耳鳴りに苦しむだろう。


「何だよ、何なんだよコレ。」


耳を押さえながらうずくまる。目に薄っすらと、涙を浮かべながら。


「痛い。痛い、痛い、痛い。」


タダの耳鳴りでは無い。妖怪化に失敗した隠の断末魔が、すぐ近くにいたジロの鼓膜をガンガン叩く。






またか。幾度いくたび、言い聞かせただろう。他の子と比べたくないがジロは、恐ろしくなるほど幼い。幼すぎる。




「人の子だ。」


美味うまそう。」


「ピギッ。」 コウダ。


「ブヒィィ。」 ニゲロォォ。




大きな音、違う。アレは獣の声だ。それで耳が痛くなって、耳を塞いで。それでも痛くて耐えられなくて、屈んで小さくなって。


それで、それで・・・・・・。






「うぅぅん。」


ココ、どこ。


「起きろ、ジロ。」


水をバシャンと掛けられ、飛び起きた。


「何すんだよ。ゲッ、父さん。」


「何が『ゲッ』だ。ほれ、見ろ。」


視線の先に転がっていたのは、大きな猪のむくろ


「くっ、腐ってるぅぅ。」






オカシイ。山の中で倒れたのに、ここには何も無い。猪の骸はあるけど木とか、木とか木とかが無い。それに何も聞こえない。


あれ? 死んだ、のかな。






「ジロよ、ヌシはなごみ村を。いや、そう。」


コウがジロの手足を縛り、肩にかついで歩き出した。


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