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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1354/1594

16-9 死ぬって決めるな


何だよ。この山から出たら死ぬって、乱雲山でしか生きられないって言うの? そりゃくやしいけど、ゴロより弱いさ。認めるよ。


でも、だからって。






「ワシがヌシを狩りに連れて行かないのはな、言い付けを守らないからだ。言い付けを守らず突っ走り、いつもわざわいもたらす。」


そんなコト・・・・・・も、あったね。


「痛い思いをしなければ分からないなら、痛い思いをさせれば良い。そう思った事もあったが、直ぐに考えを変えたよ。」


どうして、そんな顔をするのさ。


「十二になるまで待て。それまでは親の言い付けを守り、一人でも暮らせるように学べ。食べられる物と食べられない物、飲める水と飲めない水の違い。煮炊きや縫物、身を隠したり守る手立て。他にもあるぞ。」


そんなの、どうにでもナルでしょう。


「甘い。」


何が。


「人の話を終わりまで聞けないヤツは死ぬ。どんな話にも得るモノがある。」


えぇぇ。


「冷たくなったせがれむくろを、獣に食われた倅の、傷ついた骸をほうむる親の身になれ。」


死ぬって決めるな。


「谷に落ちれば助からない。この山は、そういう山だ。」


ハイハイ、そうですね。


「これまでも幾人いくびとか、言い付けをやぶった子が居た。」


あぁ、また始まった。






ふぅ、疲れた。


狩りの話や外の話なら喜んで聞くけど、堅苦しい話なんて聞きたくない。とがめられるのは、もっと嫌なモンさ。だから黙って聞き流す。






「うん、良い夜だ。」


明るいウチだと狩り人や樵、他の村の人に見つかる。だから待った。まん丸い月の夜なら、そんなに暗くナイもんね。


「兄さん、戻りなよ。」


ゲッ。


「そんなに死にたいの。」


「死なねぇよ。」






決まりを、言い付けを守れないヤツは早く死ぬ。だから父さん母さん、村の人たちも言うんだよ。なのに兄さん、ちっとも分かろうとしない。


考えるのをめたのか、考える頭が無いのか。



ドチラでも良いけど、このまま行かせるのは良く無い。だから声を掛けた。


なのに何だよ、その顔は。コッチだって嫌だよ。でも母さん、父さんを悲しませるなら言う。嫌われても伝えるしかナイんだ。






「ミツの先見。」


「覚えている。この山を出れば死ぬけど、長く生きられるんだろう? 良いじゃないか。」


「何が。」


「何がって、ん。」


死んだら生きられない、よな。


「やっと気がついた?」


「何だよ。」






ミツの先見は外れない。


雲井の継ぐ子にって話が出ても、ちっとも驚かなかった。フクさまの力とは違うから祝にはナレナイけど、祝女として生きるだろう。



ゴロは父さんの跡を継いで村長むらおさになるか、ノブさんの跡を継いで狩頭になるだろう。ケッ、うやらましいぜ。






「行きたきゃ行けば良いさ。でもね、夜に出るのはしな。谷底に落ちるよ。」


うるさい! 分かってる。」


「なら、どうして。」


家出スタイルで何を言っても、説得力ゼロ。


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