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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1353/1595

16-8 親より先に逝くな


あるの? この体にも眠っているダケで、宝の力が!




「ンググムグ。」 ソウナンダ。


「喜ぶのは早い。」


何だよ。


「今は守られているが、御山の外に出ればさらわれるぞ。祝辺はふりべもりに。」


何で?


「分からんのか。」


うん。


「他とは違う『何か』を持って生まれた子はな、ソレを持たない『誰か』から狙われる。コウは早稲わさのに狙われた。」


早稲って、ずっと南にある村だよね。おさが変わる前は、とても悪い村だったトカ何とか。


「霧雲山は幾つもの山が合わさって、一つの大きな山になった。ソレを守るには祝辺の守の他にも、強い力を持つモノが要る。」


だろうね。


「・・・・・・人柱。生贄いけにえ。」


ヘッ。


「生きたまま死ぬ、殺される。」


ゾゾゾッ。






嫌だよ、そんなの。


でも死ぬまで出られないのは、山の外を知らないまま死ぬのは嫌だ。もっと嫌だ。だから誰に止められても、閉じ込められても飛び出してやる。



霧雲山か、イイじゃないか。どんな山か知らないケド、他じゃ見られないモノ、知らないモノがイッパイあるんだろうな。


見たい! 行きたい。






「ジロ。外にあこがれるのは良いが、今のままじゃ長生き出来ない。嫌な事でも力いっぱい取り組んで、そこからイロイロ学べ。」


何だよ父さん、居たの?


「ありがとう、ダイ。」






ワシが生まれ育った北山は、それはもう悪い国だった。だから生きるため、生き延びるために飛び出したよ。


ツウが飛び出したのだって、三鶴から逃げるため。稲田の村長むらおさが三鶴のおさから娘を守るために弱い家の娘、ツウを売った。



詳しくは知らないが移り住んだから、稲田の中では弱かったらしい。だから断れなかった。だから逃げた。


それで死ぬ事になっても、穢されるより良いと考えて。




コウは前から稲田を出ると決め、いろいろ備えていた。爺さまから教わった事、全て活かして。


だからツウが逃げたと聞いても驚かず、探すフリをして村に戻った。その夜、村を出たのも前から決めていたから。



ツウを見つけて、その姿を見て思ったらしい。『助けたい』と。






「じゃあな、ジロ。」


「ング、ムググッ。」 ナワ、トイテッ。




ツウに宝の力は無い。無いが天つ神より何か、大きな力をさずかった。それは鏡の形をしていて、ツウの体に入っている。いや、入っていた。




「なぁ、ジロ。」


「ムグ。」 ナニ。


「そんなに出たいか、この山から。」


「ングッ。」 デタイ。


「イノシシを見て腰を抜かし、カノシシも狩れない。罠は張れるが、獲れるのは兎や鳥。」


だから何だよ。


「祝辺の守はな、霧雲山を守るためなら何だってする。祝の力を持つ子を集め、薪をべるように使うだろう。」


エッ、そんなの嫌だ。


「分かっておくれ、ジロ。ツウもワシもヌシに生きてもらいたい。親より先に逝くな。」


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