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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1352/1595

16-7 同じ親から生まれたのに 


認めない! 同じ親から生まれたのに、そんなのオカシイじゃないか。




「まだ分からんか。」


ダイが眉を曇らす。


「ンググ。」 ナンダヨ。






父さんも母さんも生まれ育った村を飛び出して、子なのに飛び出して生き延びた。悪いのに狙われて狩り小屋に逃げ込んで、川田の狩頭に助けてもらったんだろう?


釜戸山だっけ。裁きの山で祝から認められて、この山に住む事になったんだ。ずっと前に聞いたからフワッとしてるケド、そんな感じの話だった。






「ここは中の東国ひがしくに、霧雲山の統べる地。釜戸山は人を、乱雲山はおにのイザコザを収める。霧雲山はドチラかに偏らず、正しいと認められる様を示す。」


うん、知ってる。


「釜戸山には釜戸社かまどのやしろ、乱雲山には雲井社くもいのやしろ。どちらの祝も国つ神のめぐし子だ。他の山にも居るが、その山は守られている。」


うんうん。


「霧雲山の南で強いのは良山よいやまだが、あの山に許し無くッ近づけば死ぬ。」


そうなんだ!


「行ってみたいか。」


「ングッ。」 ウンッ。


「・・・・・・ハァ。ジロ、聞いてたか? 死ぬぞ。」


キョトン。


「霧雲山の統べる地を治めるのは人のもり、霧雲山を守るのは隠の守。どちらも祝辺はふりべの守と呼ばれる。」


うんうん、もっと聞かせて。


「人の守は死ぬと隠の守になる。隠の守は人だった時の力を失わず、そのまま使い続けるんだ。だからな、強い力を持つ子を取り込もうとする。」


ん?


「コウの親はな、宝の力を持ってナカッタから助かった。さらわれずに済んだ。コウが狙われなかったのも、力がおもてに出ていなかったからだろう。」


えっと。


「宝の力は強い。だからうつわが、体が大きくなるまで表に出ない。コウの妹のミツさんは、生まれ持った力に潰されたんだ。」


何が言いたいのさ。


「ジロ、良く聞け。」


ゴクリ。


「ヌシが生まれた時、産屋うぶやが光った。」


???






男は産屋に入れない。産声が聞こえても許されるまで、呼ばれるまでジッと待つ。なのにコウは飛び込んだ。迷わず、転がるように走って。



嬰児みどりごには目もくれず、気絶したツウを抱き起こす。息をしているのを確かめ、ほほをペシペシ叩きながら呼び戻す。


『ツウ、ツウ』と泣きながら。




コウは爺さまから聞いて知っていた。妹のミツが生まれた時、産屋が光った事を。婆さまが母に『死ぬな、戻れ』と叫びながら頬を打った事も。



嬰児は強いし産婆も居る。少しの間、放っておいても死なない。けれど母は、子を産んで直ぐの女は違う。


血が止まらずに死んだり、力尽きて死ぬ事が多い。



コウはツウを失うのが怖かった。だから産屋に飛び込み、ツウを抱き上げて名を呼び続けたのだ。『戻ってこい、逝くな』と。






「ジロ。今は表に出てイナイが、ヌシにも有るとワシは思う。」


何が?


「コウが生まれた時、光らなかったそうだ。ミツとゴロが生まれた時も光らなかった。」


・・・・・・というコトは、エッ!


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