16-7 同じ親から生まれたのに
認めない! 同じ親から生まれたのに、そんなのオカシイじゃないか。
「まだ分からんか。」
ダイが眉を曇らす。
「ンググ。」 ナンダヨ。
父さんも母さんも生まれ育った村を飛び出して、子なのに飛び出して生き延びた。悪いのに狙われて狩り小屋に逃げ込んで、川田の狩頭に助けてもらったんだろう?
釜戸山だっけ。裁きの山で祝から認められて、この山に住む事になったんだ。ずっと前に聞いたからフワッとしてるケド、そんな感じの話だった。
「ここは中の東国、霧雲山の統べる地。釜戸山は人を、乱雲山は隠のイザコザを収める。霧雲山はドチラかに偏らず、正しいと認められる様を示す。」
うん、知ってる。
「釜戸山には釜戸社、乱雲山には雲井社。どちらの祝も国つ神の愛し子だ。他の山にも居るが、その山は守られている。」
うんうん。
「霧雲山の南で強いのは良山だが、あの山に許し無くッ近づけば死ぬ。」
そうなんだ!
「行ってみたいか。」
「ングッ。」 ウンッ。
「・・・・・・ハァ。ジロ、聞いてたか? 死ぬぞ。」
キョトン。
「霧雲山の統べる地を治めるのは人の守、霧雲山を守るのは隠の守。どちらも祝辺の守と呼ばれる。」
うんうん、もっと聞かせて。
「人の守は死ぬと隠の守になる。隠の守は人だった時の力を失わず、そのまま使い続けるんだ。だからな、強い力を持つ子を取り込もうとする。」
ん?
「コウの親はな、宝の力を持ってナカッタから助かった。攫われずに済んだ。コウが狙われなかったのも、力が表に出ていなかったからだろう。」
えっと。
「宝の力は強い。だから器が、体が大きくなるまで表に出ない。コウの妹のミツさんは、生まれ持った力に潰されたんだ。」
何が言いたいのさ。
「ジロ、良く聞け。」
ゴクリ。
「ヌシが生まれた時、産屋が光った。」
???
男は産屋に入れない。産声が聞こえても許されるまで、呼ばれるまでジッと待つ。なのにコウは飛び込んだ。迷わず、転がるように走って。
嬰児には目もくれず、気絶したツウを抱き起こす。息をしているのを確かめ、頬をペシペシ叩きながら呼び戻す。
『ツウ、ツウ』と泣きながら。
コウは爺さまから聞いて知っていた。妹のミツが生まれた時、産屋が光った事を。婆さまが母に『死ぬな、戻れ』と叫びながら頬を打った事も。
嬰児は強いし産婆も居る。少しの間、放っておいても死なない。けれど母は、子を産んで直ぐの女は違う。
血が止まらずに死んだり、力尽きて死ぬ事が多い。
コウはツウを失うのが怖かった。だから産屋に飛び込み、ツウを抱き上げて名を呼び続けたのだ。『戻ってこい、逝くな』と。
「ジロ。今は表に出てイナイが、ヌシにも有るとワシは思う。」
何が?
「コウが生まれた時、光らなかったそうだ。ミツとゴロが生まれた時も光らなかった。」
・・・・・・というコトは、エッ!




