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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1348/1594

16-3 決めたよ


ジロは嬰児みどりごの時から怒りっぽく、両の手足をバタバタさせて暴れた。他の子よりも力が強く、声も大きかった。



あやしても静かにならず、泣き疲れるまで見守る。そんな日が続き、ツウがゲッソリ痩せてしまう。


倒れる前に何とか。そう思い、出来るだけそばに居たけど。






「困った。」


コウが頭をかかえる。


「あの子を引き止めるのは、もう。」


ツウが目を伏せた。






引き止めるのは難しい。けれどジロを、あの子を外に出せば死ぬ。


狩れるのは兎と鳥で、シシや熊は狩れない。カノシシからは何とか逃げられるだろうが、イノシシや熊に出くわせば終わり。






祝辺はふりべの人の守が人のおさになって、霧雲山の統べる地からいくさが減った。」


「そうね。」


おにの守が力をふるい、他から守っている。」


「そう聞いたわ。」


「・・・・・・ジロは人の話を聞かない。」


「そう、なのよね。」






ミツとゴロに宝の力が出るようになったのは、三つになって直ぐの頃。


妹と弟に大きく、強い力が現れた。その事がジロの心に、大きな傷をつくったのでしょう。けれど、だからって山から出たいと言い出すなんて。



ジロは長く生きられない。守りをぬけて村や国に入っても、そこで上手うまく生きられるとは思えない。何でも押し通して、おのの考えを貫くでしょう。


その時、何が起こるのか。考えたダケで恐ろしい。






「ジロはゴロに、弟に宝の力が現れて思ったんだろう。いつか己にも、と。」


「いつまでっても現れなくて、それでも諦められなくて。それで己を追い詰めればと、そう考えたのかしら。」


「そう、だろうね。」






稲田に居た時、何とも思わなかった。爺さまに宝の力があったのに、父さんには無かったから。


宝の力は子だから、孫だからって現れるモノじゃない。そう思っていた。だから驚いたよ。ゴロに辺りを探り知る力が現れた時は。



ミツに先見の力が現れたのは、ツウが天つ神より授かった鏡が引き寄せた。そう思っていたけれど、今は少し違う。


ツウの母さんには弱いけど、祝の力が有ったから。



祝女か祝人の孫か、その子か孫か。薄くても祝の血が混じっていたんだ。だから三鶴に狙われた。






「コウ?」


「何だい、ツウ。」


・・・・・・ポッ。




三人の子の親になっても、とても仲が良い。そんな両親を生暖なまあたたかい目で見つめるミツとゴロ。




「ただいま。」


今、戻りました。という顔をして声を掛ける。


「おかえり。」






ジロは知っている。十二になれば雲井社くもいのやしろへ行き、祝から『乱雲山で生きるか、山から出るか』と問われる事を。



御山を出入り出来る人は、見える目を持つ社の司と村長に狩頭、きこり。雲井の祝も出ようと思えば出られるけれど、御山から出ようとしない。


禰宜ねぎは隠の世に居て、人のときに姿を現す。いつでも、どこでも好きな時に。なのに教えてくれない。





「父さん、母さん。決めたよ。」


家にタッと駆け込み、ジロが言った。


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