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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
新天地編
1346/1596

16-1 どうして

新章スタート!


コウの子ジロは問題児。親の言い付けを破り、周囲の人から何を言われても聞く耳を持たない。そんなジロが家出したらドウなる?


御山を出て直ぐ熊に襲われ、瀕死の状態になったのを救ったのは化け王。『人とは違う生き物になっても、それでも生きたいか』と問われ、『生きたいです』と答えたジロ。体を乗っ取られて大慌て。


新天地編、はじまります。 


父さん、父さんの爺さま。その爺様、その爺様も宝の力を持っていた。だから『いつか』と思っていたのに、どうして!




「兄さん、諦めなよ。」


「そうよ。御山の外に出ても、熊に襲われて死ぬわ。」


うるさい。」




双子ふたごは三つで宝の力が出た。


妹には先を見る力、弟には探り当てる力がある。弟は五つで、たった五つで狩りを教わるようになった。いつか父さんの跡を継ぐだろう。


妹は五つで継ぐ子になり、家から雲井社くもいのやしろに通っている。



二つしか離れてイナイのに、二年も早く生まれたのに何もない。罠を張ってもれるのは鳥。兎にもシシにも逃げられ、熊を見たいと言ったダケで叱られた。




「十二になったら山を出る! 決めたんだ。」


「言ったでしょう? 死ぬよ。」


すえの事は変わるんだ。先見ったって、何かをチラッと見るダケだろう。信じるモンか。」




父さんに言われた。十二になったら好きに生きろ。御山を出たければ待て。狩りを教わりたければ言い付けを守れ。


出来るだけ守ったのに、どんなに待っても宝の力が出ない。




「言い付けを破るヤツは長く生きられない。」


「黙れ、ゴロ。」


「何を焦っているんだよ、兄さん。」


「・・・・・・もんか。」


「えっ。」


「父さんに似て生まれたヤツに、宝の力を持つヤツに分かるモンか!」




母さんは、とても美しい。他の誰よりも美しいと思う。だから『母さんに似ているね』と言われて、小さい時は嬉しかった。今は嬉しくない。


ミツもゴロも父さんに似て生まれた。三つで宝の力が表に出て、使えるようになったのが羨ましかった。今は顔も見たくない。




「先に生まれたのに。」


どうして。


「狩り、したいのに。」


どうして。


「好きなのに。」


どうして。




ジロ。父さんの爺さまは他の狩り人からも慕われる、とっても強い狩り人だった。父さんにイロイロ教えて、強い狩り人に育てた人だ。


そんな人の名をもらったのに、狩れるのは兎や鳥だけ。



父さんと母さんを悪いヤツから守りながら、釜戸山に連れて行った川田の狩頭の名がゴロ。父さんの妹はミツで、他の人には見えない「もや」が見えた。


そんな人の名をもらった妹と弟は、たった三つで。




「誰に何を言われても、止められても御山から出る。決めたんだ。」


「兄さん、悪いコトは言わないから。」


「そうだよ。小さな獣を捕らえる罠しか張れない。弓の扱いだって、そう上手うまくない。御山に熊は出ないケド、外には出るんだよ。出くわしたらドウするのさ。」




父さんは大弓で、一本の矢で仕留める。他の狩り人は熊をグルッと囲んで、矢をバンバン放つのに。


父さんは御山の外に出られるし、他の狩り人と力を会わせて、悪いヤツを捕らえて釜戸社かまどのやしろに引き渡す。だから、いつか。




「戦うさ。仕留めるさ。」


ミツとゴロが黙って、ジロを見つめた。


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