15-63 決死の覚悟で
サミは琅邪の闇に気付くも、卑呼姉弟の願いが穏やかに暮らす事と知り、黙って立ち去った。
「琅邪から離れれば、それだけ。」
とはいえ、民の顔は明るい。隠たちも穏やかだ。
「荒れて、いたのだろうな。」
倅はシッカリしていたが、孫は違った。戦好きは生まれつき。アチコチに仕掛け、その命を散らしたと聞く。
「民が幸せなら、それで良い。」
今の儺国王は鬼。倅の、孫の血も絶えた。これからも鬼が人の世で、その力を揮うのだろうよ。
生き神。人に望まれている間は、その地を守って栄えさせる。
卑呼姉弟が何を隠しているのか、さっぱり分からない。けれどソレは人を、琅邪にも悪い事では無いのだろう。纏う闇が輝いていた。
儺升粒は危うい。
このまま死んで鬼になれば、姉弟と共に居れば琅邪を守る力になる。けれど人の世に残されたり、突き放されれば闇堕ち。
「いいや、あの目。」
姉弟と離れても、祓い清められるまで留まるだろう。琅邪を守るために。
「ココ。」
乱雲山で、和みで幸せに暮らしておくれ。会えなくても、ずっと遠くから願っているよ。
サミによる儺の見張りは続くが、琅邪に仕掛けようとした村や国が滅びた結果、鎮の西国に平和が訪れた。
十王が力を合わせて悪の芽を刈り取っているのだが、その方法は苛烈。
送りつけられた不用品は二週間、保管してから処分。不法滞在者は拘束し、額や頬など目立つ場所に入墨してから強制送還。
再入国を試みても、それが成功しても一目で判る。
「✕□※△!」
「サッパリ分からん。」
シュパッ。
「〇△□▽※!」
「何を言っている。」
ブスリ。
「※✕□!」
「煩い。」
プッシュゥ。
鎮の西国、中の西国でも入墨は罪人の印。見つけ次第、処分対象。
強制送還するのは一度だけ。入墨があれば問答無用で殺処分され、その骸は大穴に投げ込まれて焼却。
余罪があれば去勢して、生きたまま獣に食わせる。
一匹でたら百匹いると思え。と言われる群集性が強く、群衆密度が高くなるホド成長速度が速く、害虫度合が強くなる黒いカサカサと同じなのだ。
発見次第駆除しなければ、アッと言う間に魔窟と化す。
「懲りないよねぇ。」
吉舎、呆れ顔。
「そっ、その通り。」
九王が声を揃える。
儺国に、儺国王に睨まれたらオシマイ。いつからか、そう思われるようになっていた。勿論、吉舎は何もしない。動くのは卑呼姉弟。
ある意味、最強。
「ん、食べないの?」
十王の集いだ。それぞれ特産品を持ち込み、感想や意見を聞く。
儺からはサバの燻製を持ってきましたヨ。
「イタダキマス。」
九王、決死の覚悟でガブリ。
「美味しい。」
食べ物に紫煙は使いません!
西国統一編でした。新天地編に続きます。お楽しみに!