表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
西国統一編
1344/1597

15-62 捨てる気はない


琅邪ろうやの闇は深い。


噴き出す闇を取り込んだのか、海に投げ捨てたのか。この地は清らでサラサラしている。




「探し物は見つかりましたか。」


儺升粒なしょぶが微笑む。


「いいえ。」




叢闇むらやみしな闇喰やみぐららいの品が隠されている。そう思ったが違う。持ち込まれても海社わだつみのやしろへ。残った闇は取り込むか何かして、琅邪を守っている。


そんな事が出来るのは卑呼ひこ姉弟。



会うか。いや、どうやって。姉は琅邪女王神ろうやのめのうのかみ、弟は琅邪王弟神ろうやのおおとのかみ。中つ国、国つ神で在らせられる。


はじまりの隠神、三柱のおおせだがソレだけ。



儺升粒は琅邪大王ろうやのおおきみで、琅邪の社の司。その気になれば今、直ぐにでも。




「琅邪大王。琅邪社ろうやのやしろ御坐おわす二柱に、お伝えしたい事があるのです。お許し、いただけませんか。」


ニコリ。


「では言伝ことづて、お預かりします。」


ソウキタカ。


「いいえ。御会いして、おので。」




琅邪の闇は消えない。けれど濃くなること、噴き出す事も無いだろう。


このまま、とも思う。思うが確かめなければ儺の全て、裏の裏まで調べられない。



さぁドウする。


社の司は人のおさ、国を統べるのがきみ。その二つを兼ねるのだから、他とは違う力を持っているのだろう。それを使え!




「わかりました。少しアチラで、お待ちください。」


そう言った儺升粒の後ろから、夜鳥やとりがスッと顔を出した。その目は恐ろしく冷たい。


「では、頼みます。」


鬼だ。黒い翼を持つ、とても強い鬼。


体が思うように動かない。真っ直ぐ歩いているが、頭がボウっとしている。考えが纏まらないのは、操られているからか。






ややこしいコトになる前に、会って確かめましょう。


儺升粒の力は効き難くても、夜鳥の力は効いている。暴れれば切り刻み、小さな壷に入れて送り返しましょう。



もう少し、イオが思うように動けるようになるまでで良い。琅邪で静かに暮らし、力を蓄えるの。だから、気に入らないけど守るわ。琅邪と儺を。




「何か出ましたか。」


ミチが問い、微笑む。


「いいえ。」


サミがこうべれたまま答え、待っている。


「顔を上げなさい。」


「はい。」


ゆっくり上げた顔には、笑顔が張りつけられていた。


「琅邪女王神、琅邪王弟神。これからも、ずっと琅邪を御守りくださるのですか。」


「琅邪の民に求められなくなるまで、この地で穏やかに暮らしたい。そう願っています。」




ミチはイオのため、イオはミチのために生きている。儺升粒は琅邪王ろうやのきみを消すため、いように使ったダケ。


かといって捨てる気はない。



儺升粒だって、ソレに気付いている。それでも姉弟から離れようとしないのは、その力を強く頼っているから。


見捨てられれば直ぐにでも、他から仕掛けられたり攻め込まれる。そうなれば守り切れない。




「ありがとうございます。」


姉弟の言の葉に偽りは無い。心から琅邪での、穏やかな暮らしを守りたいと思っている。守るためなら、どんな事でも為さるだろう。


「これから儺を、調べて回ろうと思います。」


ひょうに戻る前に、もう一度ひとたび。」


「はい。きっとうかがいます。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ