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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
西国統一編
1338/1594

15-56 泣きたければ泣け


乱雲山にある村の一つ、なごみで幸せに暮らすココの姿を見て安堵したサミ。


力が抜けたのだろう。ヘナヘナと、その場にくずおれる。






雲井社くもいのやしろが取り仕切っている子の家で会った時、ずっと三人で固まっていた。」


コウが語りだす。


しづめ西国にしくにからさらわれ、耶万やまから攫われ、早稲わさはずれで見たくないモノを見せられた。」


・・・・・・そうか。


けがされていない。」


えっ。


「見せられたが、そうなる前に救い出された。」




ココは同じように攫われた子らと、耶万に連れてこられた。


生き残ったのはきみの娘におさの娘、兵頭つわものがしらせがれの三人。他は壊れたり壊されて、言の葉に出来ない扱いを受けて死ぬ。


そのむくろは捨て置かれ、そのまま。



倅に殺される前の耶万王やまのきみは、差し出された奴婢ぬひたちに問うた。『あぁなりたいか』と。


渇きと飢えに苦しむ者に、先の事を考える力は無い。答えは一つ。




「パッと見て他と違うと、そう思われた。だから檻に入れられ、他から守られたのだろう。」




ココはノブに、で攫われてから子の家に引き取られるまでの全てを打ち明けた。それを聞いても逃げず、共に生きようとノブは言った。



珂国かのくにの長の娘ミア、対国ついのくにの兵頭の倅カセは驚く。それからだ。独り身を通すツモリだったミアに、カセが思いを伝え始めたのは。


二人は一年ひととせのち、契る。



ココ、ミア、カセの三人は今でも、とても仲が良い。




「オレは民をこごえらせたり飢えさせない。この御山は強い力で守られているし、ノブはココを心からいつくしんでいる。」


見える目を持つ村長、コウから聞かされ嗚咽おえつが込み上げた。


「泣きたければ泣け。心を殺すな。」




死んでしまったと、酷い扱いを受けたと思っていた妹が生きていた。ギリギリで救い出され、この山で幸せに暮らしている。



他から切り離され、神の御力で守られた山。


人のときでは祝、おにの世には禰宜ねぎが目を光らせている。だからいくさにならないし、仕掛けられることも攻められる事も無い。




「ありがとうございます。」


サミがコウにこうべれた。


「これからも妹を、ココを守ってください。」


「村長だからね。動けなくなるまで、隠になるまで他の民も守るよ。」


コウが微笑む。






乱雲山から雲井の禰宜に連れられ、和山社なぎのやまのやしろへ。大蛇神おろちのかみ夜叉神よさのかみ、猫神に誓いを立てたサミは空霧うつおぎきに戻り、片付け始める。


人の世とのさかいに在る妖怪の町、ひょうに移り住むために。




ぬらりさま。いっいっ、如何いかがなさいます。」


「おっおっ、落ち着けげん。」


「そうダぞ。落ち着くのだ。」


むねよ、何だソレは。」


「・・・・・・ざる、で御座いマス。」




瓢の長、滑。大臣おおおみ、鯰。おみの竜。揃って大慌て。


そりゃソウだ。はじまりの隠神で在らせられる大蛇神、一柱でもスゴイのに猫神、鬼神も御認め遊ばした隠。



元は儺国王なのくにのきみ。隠になっても闇にとらわれ続け、それを取り払われて消えかかったのに助かった。


そんなのが儺国なのくにを見張るために、わざわざ瓢を生活拠点に選んだのだ。



転居手続き、拒否したいケド怖くて出来ない!


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