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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
西国統一編
1336/1597

15-54 悪いのは


サミは儺国王なのくにのきみだった。


他と比べれば賢王だったが、それでも多くの命を奪っている。



今、サミを苦しめているのは呪い。


恨みつらみが闇に変わり、その身に取り憑いたのだ。祝ならスッと清めるだろうが、コウは狩り人で祝ではない。






「耐えられるのか。」


「どう、だろうな。」


「透けてきたゾ。」




雲井の三妖が見開く。その隣でジッと見つめるコウが、膝を折って微笑む。


その目は優しく、『もう少しだ』と言っているようだった。




「シニタクナイ。」


「コワイヨォ。」


「タスケテ。」




サミが殺した、守れなかった人たちが叫ぶ。きみ、それも大王おおきみだ。仕掛けられれば攻めるし、攻められれば滅ぼす。


悪いのは王で民ではない。それでもった、殺した、死なせた。



守らなければイケナイ民を盾にされれば、どんなに胸が痛んでも引けない。泣きながら嬰児みどりごをあやす母でも、怯える幼子おさなごを抱きしめる母でも。


妹や弟を守るように前に出て、その小さな体で隠そうとする幼子。好いた娘を守り切れず、斬り殺された男のむくろ。それらの目が訴える。




「モウ、ヤメテクレ。」


「イクサスルナラ、ヨソデヤレ。」


「マキコムナ。」




悪かった。謝って許されるとは思わない。けれど、いやそう。を、儺国なのくにを守るためにしたこと。全て背負うのは大王。



大王が倒れれば国が滅ぶ。国が滅びれば、その民は奴婢ぬひになる。奴婢になれば言えないような事をされたり、させられたりする。


『あの時、死んでいれば』なんて思わせたくない。だから戦った。




「ユルサナイ。」


「ユルセナイ。」




解っている。何を言っても、何をしても償いきれない。けれど、あの時は他にてだてが無かった。


儺国は大きい。滅ぼした村や国を取り込んで、少しづつ立て直そう。そう思っていたのにやまいに倒れ、死ぬんだなと。



跡継ぎを厳しく育て、遣り切った。あの時は、そう思ったんだ。でも甘かった。せがれは良くやったが、孫はいくさ狂い。


アレは生まれつきだろう。力が全てだと思い込み、殺したおさや王の娘を。




「ココ。」


まだ子だ。追い回されて捕らえられ、泣きながら助けを求めただろう。


「すまない。」


言えないような事をされたか、それを見せられたか。




強い村のはずれで見つかり、舟に乗せられ調べを受けた。儺に戻ろうと思えば戻れたのに戻らず、中の東国ひがしくにとどまったのは怖かったから。


なぜ生き残ったのかと問い詰められ、揉みくちゃにされると思ったから。



耶万やまでは獣を入れる檻に入れられ、垂れ流していたと聞く。耶万の継ぐ子が、こっそり食べ物や水を差し入れていたとも。


生き残ったのはココを入れて三人。他は真中まなか七国ななくにに売られ、酷い扱いを受けて死んだ。




「クルシメ。」



戦を始めるのは直ぐだ。なのに終わらせるのは難しく、うんと時が掛かる。だから始めてはイケナイ。


仕掛けられぬよう目を光らせ、迫られる前に話し合う。それが王。


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