表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
西国統一編
1334/1594

15-52 動くと消えるよ


霧雲山の守りが固いのは、御山の力を集めたから。山守のいただきを守る祝辺はふりべもりが、その力を強めているから。


乱雲山が強いのは、雲井の祝がおにになっても力をふるうから。祝辺の守と違って姿を見せないのは、隠のときから人の世を守っているから。






「ウッ。」


何だ、この山は。息が、胸が潰れる。


「気を抜くな。スッと清められ、丸ごとアチラに引き摺り込まれるぞ。」




この先にココが居る。御山の頂に湖があって、その周りに村がある。その一つがなごみ。


強い力を持っていた狩り人の孫が、生まれ育った村から逃げた娘と釜戸山を目指した。それから乱雲山に入り、同じような子と村を作ったとか何とか。




「見ない顔ですね。」


御山の中腹、生きているような霧の奥から声がした。


「この道を通るのは生き物だけ。」


人なのに、人とは違う何かを纏っている。


「待てコウ! つがえた矢を戻せ。」


「はい、ゴロゴロさま。」




弓に番えたのは、隠の動きを止めて捕らえるための矢。どんなに皮が厚くても、どんなに太くて硬い毛で覆われていても射抜く。



コウは伝説の狩り人、ジロから秘法を伝授された孫息子。移動することなく俯瞰ふかんできる宝の力がおもてに出たと同時に、見えないモノを見る目を得た。


年を重ねる事で生物や静物の弱点も見抜けるようになり、たった一本の矢で熊を射殺せる狩り人でもある。




大蛇神おろちのかみの使い秋津あきず黒黄くきと申します。」


そう言ってポンと、元の姿に戻った。


「蛇でも鼠でも、狐でもなく。」


「はい。」


濃緑色の複眼がキラリ。




黒黄はオニヤンマの隠。


たまに人の姿に化けて務めを果たすが、それは隠の世での事。人の世には出ない。そんな秋津がナゼ人の世、乱雲山に居るのか。




「こちらを。」


ドコから出したのか、和山社なぎのやまのやしろの札を示す。


まことですね。」


コンが言うのだ、間違いナイ。




チュウは牙滝神きばたきのかみの使わしめ。悪鬼おき嫌呂きろろは長期出張から戻ったバカリ。


数は多いのに深刻な使い蛇不足。残るは黒黄、ただ一隠。




「ゴロゴロさま。この先へ行かせるなら、軽く清めてから。胸にドス黒い闇が広がっています。」


な、にを言う。


「そうか。分かった、そうしよう。」


と言って、ゴロゴロがシャキンと爪を出した。


「ヒッ。」


黒黄が短い悲鳴を上げ、目を回す。




サミは長年、妹のココを探していた。なのに見つからず、その胸に闇が広がる。気付いたのは黒黄だけ。




「コウよ、頼めるか。」


「はい、ゴロゴロさま。」


弓に違う矢を番え、スゥっと引っ張る。




サミは咄嗟とっさに逃げようとした。けれど枝の上からキラ、背後にはコンが控えている。雲井の三妖怪、揃い踏み。




「動くと消えるよ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ