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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
西国統一編
1333/1595

15-51 お受けします


話し合いの末、琅邪ろうや儺国なのくにの監視役にサミが選ばれた。


儺国出身の元、儺国王ろうやのくにのきみ琅邪社ろうやのやしろの面面が隠し事をしても直ぐに見抜き、知らせてくれるだろう。






まことですか!ココが、妹が生きているというのは。」


空霧うつおぎりやしろに呼ばれたサミが、叫ぶように言った。


「あぁ、生きている。」


夜叉神よさのかみが静かにおっしゃり、御目を細め遊ばす。




いくら探しても見つからなかった末の妹。父からは『忘れろ』と言われたが、サミには忘れられなかった。


年の離れた、それも妹だ。小さくてフワフワしていて、トテトテと歩きながら両の手を伸ばす。抱き上げるとキャッキャと喜び、ニコニコと笑う。


その全てに幾度いくたび、救われたか。




「ココが、ココが生きている。」


それだけで。生きていると分かっただけでも。


「会いたいか。」


「エッ。」


会える、のか。


「会わせても良いが、こちらの頼みを聞いてもらうゾ。」


何をさせる気だ!




どれだけ探しても見つからなかった。誰に聞いても分からなかった。この社にも通い、繰り返し問うた。なのに、その時は何も言わなかった。


何を企んでいる。


ココは、妹はとらわれているのか。生きているダケで死にたいと、そんな扱いを受けているのか。すぐに会わせない、というコトは・・・・・・。




「サミよ。ココは今、人のとき。霧雲山の統べる地で幸せに暮らしている。」


霧雲山。中の東国ひがしくに真中まなかそびえる山の集まりか。


いたおのこと契り、母になった。」


ココが、あの小さかったココが母に。




サミの目に涙があふれ、ほほを伝う。おのが泣いていると気付いたのは、白牙はがから小さな布を渡された時。


それを手にした瞬間、胸の奥が締め付けられた。




「ココが織った布だ。」


「ココが。」


柔らかく、シッカリとした布。


花で染めたのだろう。薄い桃色で、ほつれないようにかがってある。一針一針、心を込めて。


「頼み、とは。ソレをすればココに、妹の姿を見られますか。」


遠くからでも良い。生きている姿を、笑っている顔を見たい。幸せに暮らしているなら、それを確かめたい。


「儺国を見張れ。どんな動きも見落とさず、全てを告げしらせよ。」


儺国を見張る?


「儺国は琅邪に取り込まれ、小鬼が大王おおきみになった。」


「えっ、琅邪。」




琅邪は儺国の一つ。小さいが海に近く、平たい地が広がっていた。人が足りないのか、奴婢ぬひの子を卑呼ひこと名づけ、酷い扱いをしていたな。



いつか滅びると思っていたが、父王を倒した儺升粒なしょぶだったか。せがれきみになって立て直したと聞く。


支えたのは強い力を持つめかんなぎおなんなぎで、姉弟だとも。




「儺を取り込んだ琅邪は、しづめの十王をしたがえた。儺国王、吉舎きさ後見うしろみは生き神、琅邪女王神ろうやのめのうのかみ琅邪王弟神ろうやのおおとのかみ。」


「生き神ではなくおに、いや妖怪。となると鬼。」


大当たり!


「サミよ、どうする。」


「お受けします。妹に、遠くからで良いのでココに会わせてください。」


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