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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
西国統一編
1332/1594

15-50 戻ろうと思えば


大蛇おろちはコッコから聞いた話を思い出していた。早稲神わさのかみの使わしめさねが、狐の会でコッソリ聞かせてくれたという話を。




耶万やまに滅ぼされた国の生き残りが、他と分けられていた奴婢ぬひを連れ出した。その中に居たしづめ西国にしくにの子が、中の東国ひがしくにで暮らしている。」


大蛇が切り出す。


「戻ろうと思えば戻れたろうに。」


猫神が呟き、御目を伏せられた。


「助かったのは儺国王なのくにのきみの娘、珂国かのくにおさの娘、対国ついのくにの兵頭のせがれ。他は・・・・・・根の国へ。」


そうおっしゃり、夜叉神よさのかみが小さく溜息をき為さる。






早稲わさはずれで見つかった子は、ギリギリのところで助かった。発見が少し遅れていたら、きっとグチャグチャに壊されていただろう。



攫ったのは早稲が変わった事を知らなかった。


もし見つかっても幾人いくびとゆずれば、何か渡せば見逃みのがされる。そう思ったから舟寄せ近くに隠し、離れたのだ。


取られる事はナイと考えて。






「その子ら、もう。」


「いいえ、猫神。子らを引き取ったのは霧雲山の統べる地。」


「となると釜戸山、日吉山、乱雲山か。」






三人は乱雲山、雲井社くもいのやしろが取り仕切る子の家で育った。その後、なごみ村に移る。


和み村はコウとツウが子の家の皆と力を合わせ、一から作った村。皆、若いがシッカリ者だ。



乱雲山にある村はいづれも、雲井湖に面している。湖をグルリを回れば足を滑らせる事なく行き来できるので、何か起きても慌てず焦らず助け合う。


老いてもイキイキしているのは、御山に守られていると知っているから。






「乱雲山なら、確かめたくても確かめられない。」


雲井社くもいのやしろ禰宜ねぎは、とっても強いからネ。


雲井神くもいのかみの使わしめ、ゴロゴロも猫。」


大蛇の目がキラリと光った。


「ソッ、れはソウですが。」


猫神、タジタジ。




雲井神の使わしめゴロゴロ、渦風神うずかぜのかみの使わしめながれも猫又だが、猫の集まりでは毛繕いするダケ。


壁に耳あり障子に目あり。猫の集まりでも気を抜けない。




「乱雲山に居るなら、祝辺の守でも手を出せません。大蛇神の御考えは。」


夜叉神、ニッコリ。


「ウム。」




大蛇神のめぐし子、マルは良山よいやまから出ない。けれどソレは人のときの話。


大実社おおみのやしろからおにの世に入り、アチコチ出掛けるので雲井の禰宜とも顔馴染かおなじみ




空霧うつおぎりには人の世から、儺国王なのくにのきみだった男が移り住んだと聞く。名はサミ。今も耶万にさらわれ、死んだ妹を探しているとか。」


はじまりの隠神だもの。いろんな情報、持ってマス。


「はい、その通りで御座います。」


夜叉神、クワッ。その直ぐ後、静かに仰る。




サミは妹、ココが生きている事を知らない。子の家で出会ったノブと契り、親になった事。愛し愛され、幸せに暮らしている事も知らない。




「伝えれば、きっと会いたいと言うだろう。けれどサミは隠。見る目を持たぬ人には、兄妹でも分らぬだろう。」


・・・・・・。


「それでも、遠くからでも姿を見せれば変わると思う。」


大蛇がシュルリと舌を出し、引っ込めた。


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