15-49 犬じゃなくても憧れマス
鎮の西国から戻ったコンコンず、疲れた体に鞭打って隠の世、和山社へ。
「そうか。」
唸る蛇神、見合うコンコン。
「よく働いてくれた。」
ぱぁぁ。
「流山に戻り、ゆっくり休みなさい。」
・・・・・・えっ。
ま、マルさま! 良山でナデナデして下さいますよね。狐の頭を優しく撫でて、ありがとうって。
ほら、耳だって倒せます。撫で易いように。
「そうそう、」
ぱぁぁ。
「一山に行くと良い。出で湯に浸かって疲れを癒しなさい。」
それも良いかも。って違う! いま欲しいのはナデナデです。狐だって撫でられたい。
「そういえば。」
ぱぁぁ。
「白夜間の雪花が『会いたい』と言っていたな。」
オス狐に用は無い。
「そう拗ねるな。」
拗ねてナイもん。
「マルも会いたがっている。一度、良山に寄れ。」
「ハイッ。」
喜んで!
使い狐から報告を受けた大蛇神、猫神と夜叉神の元へ蛇を遣わす。
同じ頃、コンコンず。マルに撫でられてから出で湯に浸かり、優しくブラッシングされ御満悦。
良村には犬用の出で湯に産屋、飼育場、運動場、療養所まで完備。
朝夕、飼い主と共に山歩き。木の枝ポーンで楽しく遊び、村に戻れば優しく洗われ、美味しいゴバンに舌鼓を打つ。
犬じゃなくても憧れマス。
「困った。」
猫神、お手上げ。
「困りましたね。」
夜叉神、ゲッソリ。
真中の七国、中の西国、鎮の西国にも妖怪の国守が居た。けれど戦が続き、根回ししてから隠の世へ。
やっと収まったのでチラホラ、顔を出す妖怪が増えている。
鎮の西国にも居たが、その多くが出ようとシナイ。人の世で、それはもう嫌な事があったから。守りたい誰かは根の国へ。
孫の孫とか、その孫と言われてもピンとこないモノ。
「鎮の西国、儺国に縁がある隠。」
「国を見張る力を持ち、こちらに付く隠。」
儺国に縁のある隠、妖怪は多い。けれど国を見張るとか、すべて告げ報せるとか、そんな事が出来る者が居るのだろうか。
居ても人の世に戻り、鬼が治める国で見聞きした全てを隠の世に。そう考えるとは思えない。
なら根の国に?
根の国から中つ国に戻れるのは、それが許されるのは一年に一度。ずっと、となるとアチコチ回ってアレコレ伝える事になる。
見つかったとしても、きっと戻りたがらない。ほんの少しでも思いを残していたら、隠の世から見守る事を選ぶから。
「・・・・・・そういえば。」
夜叉神が御顔を上げ、腕組み為さった。
「何か、思い出されましたか。」
猫神が杯を置き、問い為さる。
「ウチに儺国王だった男が、耶万に奪われた妹を探して訪ねて来ました。」




