15-48 触りたくないなぁ
マルが糸に祝の力を纏わせ、織った布を縫い合わせた。
見た目は小さいが、その容量は明里のタプタプ袋と同じ。残念ながら使い捨てなので、悪鬼も嫌呂も家宝にしようと思っていた。
のだが、使うしかナイようで。
「くぅぅ、もう!」
「そこの鬼、隠れてナイで出てこい!」
荒ぶるコンコンず。
「おや、お気づきでしたか。」
ミチが微笑む。
離れた場所から見ていたが、姿を現さなければ潰される。そんな気がして出てきた。ミチの隣にはイオ、その後ろに控えているのも鬼。
分狐は一つになって、尾を抱いてジッとしている。
「あの倉、いや社か。隠しているな。」
悪鬼が目を細める。
「フフフ、どうでしょう。」
嫌呂が袋を開き、危険物を一つづつ入れている。その度に清らな光が漏れるので、小さな妖怪がガタガタ震えだした。
「イオ。」
「はい。」
姉弟は他の隠や妖怪の思考も読む無形に恐れを抱き、黙って従う事を選んだ。悪鬼と嫌呂は違うが、無形は焼山に居る。
同じ鎮の西国だ。何か起これば、いや起きる前に動くだろう。
スタスタと社に戻り、杯に入れた紅玉を差し出す。白い筋の奥から闇が出ていて、禍禍しいとしか言えない代物だ。触れれば乗っ取られるか消される。
そう考えたのだが・・・・・・。
「触りたくないなぁ。」
と言いながら、嫌呂が狐火で包んで袋に入れた。
「早いな。」
悪鬼が驚く。
「プルン。」 トケタノカナ。
無形が袋を覗き込み、縦に伸びて縮む。
闇喰らいの品が、あんなに有ったのに残らず清められた。
きっと生き物でも、人でも妖怪でも清めてしまうのだろう。そんなオソロシイ品を持ち歩くのか、あの狐は。
いや違う。袋の中から闇を、渦巻く思いも感じない。となると一つ。あの袋に入れられた品は、どんなに強く深い闇を纏っていても清められてしまう。
サッと、スッと清められるのだろう。
「解っていると思うけど、また出たら。」
「はい、狐さま。急ぎ大社へ。」
大社に持ち込まれても、稻羽にはドウする事も出来ない。だから清め水に沈めてから隠の世、和山社に使いを出す。
マルは良山にある大実社を通って、隠の世に入ったり人の世に戻ったりする。和山社に持ち込まれたアレコレを清めるために。
「プルルルルン。」 シラベオワッタヨ。
儺国の民は、とても疲れているね。他から移り住んだから、いろいろ考えながら生きている。
ザッと調べたダケだけど、十王が統べるんだ。戦になる前にドウにかするだろうよ。けどね、危ない品を埋めて隠すのはイケナイな。
「あっ、あの。」
吉舎がオドオドしだした。
「プルン。」 ワケヤシロ。
儺国に隠されていたアレコレ、全て浄化完了。




