15-46 儺升粒は悩む
特命を受けた悪鬼と嫌呂が湯溜の社憑き、無形を守りながら儺国を視察。
する前に湯溜社から琅邪社へ、使い火が遣わされた。
「儺より先に琅邪を、と。」
動物になら毒を盛れるが、火の粉に毒は盛れない。
「怖いコト考えていますね。」
イオが驚き、見開いた。
「鎮の西国を纏めたのは、戦を止めたのは琅邪。けれど毒はイケマセン。」
何も言わないが、ミチも驚いている。
「神が人に盛るのは、どうでしょうね。」
姉弟、揃ってドキリ。
「紫の煙、他の毒も琅邪から出さぬよう、シッカリと守ってください。」
「仰せのままに。」
としか言えない!
ミチは琅邪女王神、イオは琅邪王弟神。社の司は琅邪大王、儺升粒。
ミチとイオは生き神で鬼。儺升粒は半鬼。継ぐ子の吉舎を大王に据え、儺国を手に入れた。ココまでは良い。
隠せていると思っていた、知られてはイケナイことも明らかになっている。紫の煙は琅邪でしか作れない。もし知られれば、広まれば狙われる。
戦を仕掛けられるか攻め込まれ、多くの命が奪われるだろう。
「調べに来るのは社憑き。」
ゴクリ。
「守るのは狐。」
エッ。
「強いですよ。」
火の粉なのに、とても小さいのに炎に見えた。姉弟と儺升粒は悟る。歯向かえば、手を出せば消されると。
「琅邪の外れに石積みの社が御座います。どうぞ、御使いください。」
ミチは考えた。いつかイオと共に、人の世を出る時が来る。その時、受け入れてもらえるように従おうと。
「揃える物があれば、何なりと。」
イオは考えた。いつか隠の世に行くカモしれない。その時に備え、従おうと。
「お待ちして居ります。」
儺升粒は考えた。琅邪を守るには、受け入れるしかないと。
無形は兎も角、悪鬼と嫌呂は狐。石積みの社より木の洞や、雨風が凌げる人家が良い。けれど何も言わず、パチンと弾けた。
「姉さん。」
「イオ、儺升粒。琅邪を、儺国を調べるダケよ。社憑きや継ぐ子を社から出さず、見守りましょう。そうだわ、分社にも。」
「そうだね。」
姉弟は生き神になったが、石積みの社には入れなかった。だから倉で暮らしている。
見つけた社は崩れていたので、手を加えて整えた。いつか使える日が来るかもしれないと。
「整えておいて良かったわ。」
「あの中、どうなっているんだろうね。」
姉弟の話を聞き流しながら儺升粒は悩む。
狐が守る社憑きに、何を御出しすれば良いのだろう。酒か、湧き水か。食べ物は団子か、魚や貝か。そのままか焼くか。
「湧き水と団子を供えしましょう。」
「そうしよう。儺升粒も、良いかい。」
「はい。」




