15-44 会わせるか
収まるトコロに収まったか。
長かった戦も、これで。いや待て。一息つく前に隠の世、和山社へ。
「混。」
「はい、ただいま。」
湯溜神の使わしめ、混は火山ガスの化身。妖怪である。気体なので分かり難いが、高体温で空気より密度が高い。
主成分は水蒸気・二酸化炭素・二酸化硫黄。少量の水素ガス・一酸化炭素・硫化水素・塩化水素に加え、フッ化水素・水銀も含まれる。
全ての動植物を瞬殺するため、動植物恐怖症と平地恐怖症を発症。見えなくても存在感、抜群。
「外は対国、内は儺国が大陸と駆引きする事になった。」
やっと決まったんだ。長く生きられないのに、人ってノンビリしているネ。ビックリだよ。
「和山社へ伺い、御知らせしようと思う。」
エッ、急がなきゃ。
「急ぎ、頼まれてくれるか。」
「はい、喜んで。」
モワン。
真中の七国、中の西国に続き、鎮の西国も収まった。暫くの間、話し合いで片付けるだろう。
長く続いた戦で数多の国つ神が御隠れ遊ばし、中つ国は大荒れに荒れて乱れている。
どれだけ死ぬだろうな。凍えて飢えて弱って、ガリガリに痩せて動かなくなって。
「大蛇神。」
「人の世から隠の世に移った妖怪の国守が空霧に集い、知りたがっていると聞く。」
「はい。」
湯溜神は狭間の守神で在らせられる。その辺りの情報もバッチリ入手し、社憑きを派遣済。
火の粉の戦闘力は低いが、高い情報収集能力を誇る。
基本的に夜明けから夜明けまで働くが、週休三日の四交代制。福利厚生も充実。パチパチと元気よく飛び散る隠は、その大半が縁故採用。
「妖怪の国守に混じって、儺国王だったサミが嗅ぎまわって居ります。」
夜叉神は敵を殲滅後、湯溜社に出頭なさった。その縁で今でも、たまに焼山に顔を出しなさる。
「ホウ。」
大蛇神の御目が細くなり、ドキリ。
「隠の世に妹が居らず、人の世に囚われているのでは。そう考えたのでしょう。」
サミの妹、ココは生きている。中の東国、霧雲山の統べる地。乱雲山にある村、和みで。
織り人になったココは狩り人ノブの優しさに惚れ、当たって砕けろで告白。思いが通じ合い、二男一女の母となった。
乱雲山は強い力で守られているので、雲井社の許し無く出入り出来ない。御山を出られるのは村長、コウだけ。
伝説の狩り人ジロの孫はカンが鋭く、不用意に近づけば妖怪でも狩る実力者。
「鎮の西国、儺国から攫われた王の娘だったな。」
「はい。」
早稲近くの掘っ立て小屋から救出された八人のうち、三人は雲井社に引き取られた。子の家でイロイロ学び、和みで幸せに暮らしている。
鎮の西国、珂国から攫われた長の娘ミア。鎮の西国、対国から攫われた兵頭の倅カセ。二人は引かれ合い、一男一女を儲ける。
三人は今でも仲が良い。
「・・・・・・会わせるか。」
「そう、ですね。」