15-42 因果応報
大陸で発生した大量怪死事件。
変死体から漂う腐臭は、あらゆる生物から命を奪った。都市から逃げ込んだ人が、周辺の村を滅ぼす。知らずに受け入れた里は隔離され、一人残らず焼き殺された。
生きたまま。
「恐ろしい話だ。」
「人の行いとは思えない。」
その通り。鬼による正当防衛、にしては過激だが因果応報。戦を仕掛けるなら殺される、全滅する覚悟を持て。
「やまとに持ち込まれたら。」
「そっ、それは困る。」
困るドコロの騒ぎでは無い。
けれど心配無用! その毒は琅邪謹製。琅邪社で厳重に保管されているソレを持ち出すには、琅邪女王と王弟の許可に加え、琅邪大王の立ち合い必須。
そもそも人に扱える代物ではアリマセン。
「ドコで作られ、使われたのか。」
ドキッ!
居ましたよ。幼子を質に親を脅迫し、アレコレ要求した不法侵入者。決まりや言い付けを破り、好き勝手した不法滞在者。
その他もろもろ。
「病なら。」
「祝の力でも治せない、と聞くが。」
治癒能力を持つ祝は少ない。耶万社のダイのように生まれ持った者、アオのように能力が変化した者も居る。
けれど多くは隠から妖怪になり、人の世に残る事を選んだ者。腰麻社の妖怪の祝、ユキのように新たに授かった者。
「やっと落ち着いたのに。」
「・・・・・・戦に、ならなければ良いが。」
紫煙は鬼が本気を出し、作り出した猛毒。優位に交渉を進めるため、即効性の解毒剤も用意。勿論、散撒くツモリは無い。
けれど強すぎる力は抑止にも、侵略理由にもなる諸刃の剣。
「鎮の西国は十王が、戦ではナク話し合いで治める。そう決まりましたよね。」
吉舎がスクッと立ち上がり、問いかける。
「海の向こうで広がったのが流れるモノなら、やまとに入る前に止めれば良い。」
ニコリ。
「止める、と言っても。」
九王が呟き、考え込む。
儺国王、吉舎が言っている事は正しい。それを行う術が有れば、力が有れば今すぐ動くだろう。
けれど、そんなモノどこにも。
「漕ぎ出してから死ねば、乗っているのは骸。」
「波の谷に沈めば良いが、流れ着いてしまえば。」
「それを鳥が啄めば、どうする事も出来ない。」
中の西国では人を除く、社所属の精鋭が大活躍。
応援に駆け付けた、ワクワクが止まらない和邇さんズ。美酒に釣られた飲兵衛や、美食を求める食いしん坊も本気を出した。
「増えましたよねぇ。泣きながら駆け付け、戦う猿。」
違う意味で奮起したのは、のんびり楽しく生きていた猿たち。目に見えない、音も立てない何かに行く手を阻まれ、思いのまま生きらぬと気付くまで三秒。
紫煙は丸薬にもなる。それを口に放り込み、口を塞げばアラ不思議。黒い涙を流しながら四肢を動かす、最強兵団の出来上がり。




