15-39 誰か止めて!
聞いてナイぞ、どうなっている。
琅邪は小国で貧しくて、奴婢の子を崇めるバカの集まりだろう。なのに、なのに何なんだ。
「ジニダグナイ。」
一思いに殺せ。
「ミズゥ。」
喉が焼ける。
猛毒『紫煙』は儺国兵に殺され、人の世に戻った隠からイロイロ教わる事で完成した。
密入国者や不法滞在者で生体実験を繰り返し、解毒剤も完成済。
「毒が広がるのを止められれば、もっと使えるのに。」
「あら、出来るわよ。新しいので試しましょう。」
この姉弟、控え目に言ってコワイ。
犯罪者とはいえ薬漬け、いや毒漬けにしてから殺処分。骸を切り刻んでイロイロ確認し、腐敗速度を観察。オシマイ。
なワケが無い。被験者の骸を熊に食わせ、残留毒の濃度を確認。モチロン部位ごとに。
熊さん、逃げて!
「姉さん、ありがとう。これで心を傷めず、バンバン使えるよ。」
水の力で足止めし、風の力で壁を作る。でポイッ。
「良かったわ。」
良いのかミチ。イオを、弟を大量殺戮神にしたんだゾ。
「ねぇ吉弥。新しいの、どうしましょう。」
野生が首を傾げる。
「そうだなぁ。ヨシ、食うか。」
吉弥は悪意察知能力と思念伝達能力を持つ鬼。
儺国の要求を拒否した夜、国を急襲され死んだ民の魂が融合。人の悪意を糧に生きていたが生き神が現れ出たと知り、琅邪女王に救いを求めた。
琅邪では空腹を満たせないので、儺の外れに建てられた野繆分社を任されている。
「エッ、良いの?」
「食うのは人を恨んで、悪い事をする心だ。」
「んっと、良い人になっちゃうよ。」
「そうか、そうだな、アハハ。」
問答無用で捕らえられ、キツク縛られた犯罪者たち。
縄がキリキリと体に食い込み、息をするものツライ。そんな状態でトンデモナイ事を聞かされ、死を覚悟した。
「あら、まだ残っていたのね。」
「うん、試そう。」
「大陸に戻すの?」
「そうだよ。耶万は一人だけ戻したけど、これだけ戻せばウンと減らせる。」
「フフッ、そうね。そうしましょう。」
耶万に仕掛ければ闇の種を植えられ、一人だけ戻される。琅邪では余りに毒を仕込み、思考操作されてから戻される。
アコには照が憑いているし、人の長として考えるのでギリギリのトコロで踏みとどまれる。
一方、この姉弟。混ぜるな危険の劇物だ。
「では、直ぐに舟を。」
儺升粒ぅ。
「手伝いましょう。」
夛芸ぃ。
「オイっ、寝るな。」
夜飛が仁王立ちで輩を見下ろす。
「悪い事するからだよ。」
吉舎、とっても嬉しそう。
「頼もしいわ。」
・・・・・・誰か止めて!




